シャーク・テイル
監督:ビボ・バージェロン/ヴィッキー・ジェンソン/ロブ・レターマン
声の出演:ウィル・スミス/レネー・ゼルウィガー/ジャック・ブラック/アンジェリーナ・ジョリー/ダグ・E・ダグ/ジギー・マーリィ/ピーター・フォーク/マーティン・スコセッシ/ロバート・デ・ニーロ
30点満点中16点=監4/話2/出3/芸3/技4
【夢見る魚と優しきサメ、2匹のウソが混乱を呼ぶ】
洗鯨場で働くホンソメワケベラのオスカーはお調子者。彼に想いを寄せるアンジーの心にも気づくことなく、いつかBIGになることを夢見ている。いっぽう、サメとしては優しすぎるレニー。父でコーラルのボスでもあるドン・リノに命じられて生きた魚を食べる修行に取り組むものの、逃げ出してしまう。この2匹、オスカーがレニーを倒す芝居をして、オスカーが人気者になり、レニーは姿をくらますことができる、と考えたのだが……。
(2004年 アメリカ アニメ)
【なぁんも考えずに観ろ】
サンゴ礁で繰り広げられるドタバタ・コメディ。海中の景色もサカナたちの動きも美麗である。
が、もはやフルCGアニメではこの程度の技術的クォリティは当たり前。となると求められるのは、演出とストーリーの質ということになる。
演出にキレやオリジナリティや映画らしさは足りないが、舞台が水の中であるにも関わらず、あるいは水の中らしく、重さと軽さ、速さと遅さなどが感じられることにこだわったことはよくわかる。オスカーのスピード感に加え、余計なことに力をいれず一気にエンディングまで突っ走るストーリーテリングのスピード感も評価していいだろう。
ただ、お話そのものには、広がりも奥行きもない。随所にさまざまな映画のパロディを盛り込んで笑わせてはくれるが、ただそれだけ。物語の大枠は、夢想する若者、密かで身近な恋、優しき悪役、誘惑、紆余曲折を経て気づく大切なもの、親子の愛情……などといった「どこかで見たフォーマット」をつなぎ合わせただけで、浅ぁいものとなっている(浅いから突っ走ることもできる)。
パッチワークに過ぎないから「誰に、何を伝えたいのか」がわからない。オスカーと同世代のティーンが感情移入するには幼稚だし、じゃあもっと小さな世代が楽しめるかといえば、弾けたところや単純な笑いがないし、人間関係(じゃなくてサカナ関係か)が意外とつかみにくいキャラクター配置なので、それほど面白いものではないだろう。
ファミリー向けアニメで、かつストーリー映画であるなら、どの世代が観ても楽しめる多面的多層的なシナリオ作りに気を配るべきだ。きゅっと心をつかまれるようなサムシングを散らしたり詰め込んだりするべきだ。「誰に、何を伝えたいのか」という想い、それがあるからこそ演出にも一貫性と説得力が生まれるはず。
思えば『モンスターズ・インク』や『ファインディング・ニモ』にはそれがあった。アクションとしての面白さや「単純なおかしさ」が散りばめられていると同時に、もう一度観たいと思わせる優しさや切なさが画面からあふれていた。本作には、そういう“情感”がない。
情感がないから、びっくりするくらい豪華な役者たちも「もったいない」状態。ドン・リノ(デ・ニーロ)にホクロがあったりオスカー(ウィル・スミス)がヒップホップしていたりするものの、各役者・各キャラクターの持ち味が十分に生かされているとはいいがたい。
つまりストーリーやキャラクターのクリエイト&エディット能力が足りないため、パロディと豪華さだけに頼った内容になってしまっているのだ。ハッキリいえば、なぁんも考えずに作ったお話。
そのぶん、こっちもなぁんも考えずに観られることは確か。ハラハラワクワクドキドキはないけれど、退屈することなく、それなりに笑いながら最後まで観られる映画ではある。
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