NOEL ノエル
監督:チャズ・パルミンテリ
出演:スーザン・サランドン/ペネロペ・クルス/ポール・ウォーカー/アラン・アーキン/マーカス・トーマス/ソニー・マレネッリ/ジョン・ドーマン/ロビン・ウィリアムズ
30点満点中17点=監3/話3/出4/芸4/技3
【NYのイヴ。それぞれの夜を過ごす人たちに起こる奇跡】
ウエイターのアーティに付きまとわれて迷惑顔の警官マイク。異常なほど嫉妬深いマイクの性格が原因で、彼との結婚に不安を覚えるニーナ。ひょんなことからニーナを励ますことになったローズは、アルツハイマーを患う母の看病のために仕事場と病院とを往復するだけの日々。子どもの頃に病院で経験したクリスマス・パーティを「人生で最高だった」と懐かしむジュールズ。NYのイヴ。奇跡が雪とともに、人々の上へと降ってくる。
(2004年 アメリカ)
【奇跡は、自らの行為の先にある】
何人かの登場人物に起こる出来事を平行に、ちょっぴりの関連性を持たせながら描くクロス・エピソードものである。
その先達である『ラブ・アクチュアリー』を明らかに意識したDVDのパッケージ。病人の看護が重要なキーとなっているのは、やはりクロス・エピソードものである『大停電の夜に』や『クラッシュ』と共通する。で、不思議なことに本作を含めてみんなクリスマス直前の大都会が舞台。
そこに、意味がある。
残念ながら本作は、前述の3作に比べて完成度では劣る。
いや、灯り・明かりに気をつかって冬の夜のNYの美しさを描き出したことは素晴らしい。60近くになっても可愛らしさを失わないスーザン・サランドン、ペネロペ・クルスの不安いっぱいの瞳、ポール・ウォーカーのイヤミのない青年ぶりなどキャスティングも上々だろう。おおらかに流れる音楽も心地よい。
ところが、その見た目の良さに甘えてしまってか、「会話でお話が進む」という部分が大半を占めている。動的ではなく、映画的な面白みにちょっとばかり欠けるのだ。
ただ、会話メインとしたことで、重要なテーマが伝わりやすくなったのも事実。すなわち「誰かと誰かが関わりあい、誰かが誰かに影響を与えて、そうして世の中はできている」ということ。「どんな決断をするにせよ、幸せになることがいちばん大切」という価値観も本作の底辺には流れている。
自分の人生に偶然関わりあうことになった誰かから、何かを得て、それをもとに人は、生活を変えたり大きな決断を下したりする。そうして幸せになることが“偶然が呼んだ奇跡”だとするならば、それは神の思し召しではなく、「誰かと関わりあおう」とする人の行為によってもたらされるものであるはずだ。
思えば『ラブ・アクチュアリー』も『大停電の夜に』も『クラッシュ』も同じテーマを描いていた。人が自ら進んで手に入れる奇跡。それを描こうと思えば、神の存在をもっとも身近に感じられるクリスマスが格好の舞台ということなのだろう。
それともう1つ、ゲイが社会で果たす役割にも、この映画は気づかせてくれる。これもまた、本作のテーマを後押しする要素。
自分が何者であるかをまず自分自身が認め、そのうえで他人と積極的に関わっていこうとすることが、奇跡を呼ぶのである。
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