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2007/03/18

ウェザーマン

監督:ゴア・ヴァービンスキー
出演:ニコラス・ケイジ/マイケル・ケイン/ホープ・デイヴィス/ニコラス・ホルト/ジェメンヌ・デ・ラ・ペーニャ/マイケル・リスポリ/ギル・ベローズ

30点満点中18点=監4/話4/出4/芸3/技3

【お天気キャスターの、憂鬱な日々】
 シカゴのローカル局でお天気キャスターを務めるデヴィッドに、全国ネットへ進出できるチャンスが舞い込む。だが、別れた妻ノリーンにできた新しい恋人、保護観察中の息子マイケル、イジメにあっているらしい娘シェリーなど、彼の周囲には心労の元がゴロゴロ。さらに父ロバートが癌を患い、余命いくばくもないことを知らされる。なんとか「上手くやりたい」と願うデヴィッドだったが、時間だけが容赦なく過ぎていくのだった。
(2005年 アメリカ)

【人生をそのまんま描き出す、いい映画】
「なんか、いいですね、この映画」
「このヴァービンスキー監督って『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズより、これとか『マウスハント』みたいに小さな作品のほうが、味わいがあって面白いな」

「別に、深い映画ではないんです。劇的なことはほとんど起こらないわけですし」
「一応は、夫らしくありたい、父親らしくありたい、お天気キャスターらしくありたい、ピュリッツァー賞作家の父に対しても『認めてもらいたい』というデヴィッドの、アイデンティティ確立映画なんだけれど」
「でも、何もできない」
「デヴィッドの会話とか行動とか、ビミョーに間が悪いんだよね。娘に趣味を見つけてやろうとしても上手くいかない。父親の生前葬での挨拶は尻切れトンボ……」
「そういう出来事を“流していく”という人生」
「お前、どこまで真剣なんだよ、っていいたくなる。あるいは、同じダメ人間として身につまされるところがある」
「たぶん彼は彼なりに真剣で、悩んでもいるんでしょう」

「そういうね、見ていて感じる『いたたまれなさ』というのが重要なテーマとなっている」
「ん~もう、映画もデヴィッドもシャキっとしろよっていうグダグダ感がベースになっていますね」
「そのグダグダ感が『いたたまれなさ』を誘う」
「かといって、退屈じゃないんです。テンポが絶妙なんですよね」
「時おり、音を“バツっ”と切って次のシーンへと移ったりしてね」
「でも、その移った先には、また『何もできないデヴィッド』がいる」

「観ている人を力ずくで自分のペースに巻き込んでいくテンポだよね」

「で、結局は『人生には犠牲が必要』『何かを得ようと思ったら、何かを捨てなくちゃならない』というところへ落ち着きます」
「本当は、ちゃんと全部手放さずにいる道だってあったはずなのに」
「でもクソ人生を生きるダメ人間のデヴィッドには、それができなかった」
「世間から見れば、年収100万ドルのキャスターって成功者なんだけど」
「そんな成功者にも、手に入れられなかったものがある、と」
「成功って言葉の意味を考えさせるよな」

「と、いってしまえば『どうしようもない人生』の映画なんですけれど」
「それほど人生って捨てたもんじゃないよ、というメッセージも感じる」
「デヴィッドと、息子マイケルとの関係ですね」
「マイケルが自分の将来のことを語って、デヴィッドに『いいかな?』って許可を求めるシーンね」
「さらっと流してあるんですが、泣けますよね、ここ」
「マイケル、どっかで見たことがあると思ったら『アバウト・ア・ボーイ』の子だったんだな」
「いい感じで可愛く成長してくれました」
「それと、娘シェリー役のジェメンヌ・デ・ラ・ペーニャちゃんも、なにげに上手いよな」
「NYの公園を散歩するデヴィッドとシェリーは印象的でしたね」
「シェリーがイジメられていることを自覚していないと知って、デヴィッドが途端に明るくなるところね」
「自覚していないからといって、何も解決しないのに」
「でも、解決というか、シェリーを真っ当に育てていくための糸口にはなるかも知れない。だからあのシーン、ふたりがゆっくりとカーブしていく姿を俯瞰で捉えて、人生には軌道修正のチャンスが用意されているんだよ、ということを暗示して終わるんだ」
「そんなふうに、クソったれだろうが犠牲だらけだろうが、人生というものをそのまんま見せてくれるから……」
「いい映画だって感じるんだろうね」

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