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2007/03/16

パフューム ある人殺しの物語

監督:トム・ティクヴァ
出演:ベン・ウィショー/アラン・リックマン/レイチェル・ハード=ウッド/ダスティン・ホフマン/サイアン・トーマス/サム・ダグラス/キャロライン・フェルハース/カロリーネ・ヘルフルト/ポール・ベルロンド/ジョン・ハート

30点満点中18点=監3/話3/出4/芸4/技4

【鋭利な嗅覚を持つ男、その人生】
 18世紀のパリ。悪臭漂う魚市場で産み落とされたジャン=バティスト・グルヌイユは、雑踏の中や香水のような混合物から、どんなほのかな匂いでもかぎ分けられる鋭い嗅覚を持っていた。孤児院で育ち、皮なめし職人に売られた彼は、やがて「匂いを永遠にとどめておきたい」という思いに取り憑かれ、香水の調合師バルディーニに弟子入りする。匂いへの執着はグルヌイユの心から、人としての倫理観をすっかり奪ってしまうのであった。
(2007年 ドイツ/フランス/スペイン)

【映画としての外観は極めて上質】
 嗅覚のほか、視覚、聴覚、味覚、触覚からなる人間の五感。もし自分が類稀なる○覚を持つとしたら、どれがいいだろう? 他人の微妙な筋肉の動きまで感知できる視覚ってのはボクシングのチャンピオンとか読心術につながりそうで面白いかも知れない。聴覚や味覚が優れていれば、それだけで世界は豊かなものへと変わるはず。鋭い触覚ってのは麻雀のモーパイくらいにしか役に立たないかなぁ……。

 なぁんて考えたりもするが、お話としてはたいしたことのない本作。『サイボーグ009』とか『ゴシカ』など、特異な能力を“持てる者”を中心に据えた異能者モノのバリエーションであるともいえるし、副題が「ある人殺しの物語」となっているように、まさにそれだけのお話であるともいえる。しかもある意味では「で?」で終わってしまうストーリーだ。
 もちろんそこには、匂いの保存と究極の香りに執着するあまり暴走へと至る(というより、ハナっから匂い以外に興味のない)男の狂気がたっぷりと詰め込まれていて興味深くはあるのだが、重層的でもなく、枝葉やふくらましもなく、ひたすらストレート。こんな人物には感情移入などできるわけもなくて、われわれは彼の狂気に“付き合う”ほかない、という内容。
 要するにキ印の生涯なわけで、鑑賞後に夫婦や友だちどうしで語り合う言葉に困ってしまうことだろう。

 ただ、ストレートなぶん力感はあって、全編にみなぎるパワーやエネルギーが、約2時間半の間、観る者を釘づけにする。ナレーションの多さはちょっと残念だが、彼が異能者であることを視覚的に告げる抜群のオープニングから、衝撃の出産、能力の開花、事件、そして終幕まで、本当に「ある人殺しの物語」から逸脱せず、かつ退屈させることなく押し通してしまうのだ。

 シンプルな展開とともにパワー/エネルギーの源になっているのが、各パートの仕事の確かさだ。いやむしろ、ストレートな割に感情移入度が低いストーリーよりも、こうした“仕事”のパワーに酔うべき作品といえるかも知れない。
 うぶ毛や肌のハリまで捉えるカメラ、微妙な明暗を生み出す照明、18世紀の世界を再現した美術・特撮、重厚な音楽……。すべての要素が高い次元の仕事で統一されていて、隅々まで密度のあるカット/シーンを作り出している。
 主演ベン・ウィショーの“只者ではない”眼、シーンをキリっと引き締めるダスティン・ホフマンの存在感、レイチェル・ハード=ウッドやキャロライン・フェルハースの透明感ある美しさなど、演技陣もこの世界にピタリとハマる体臭を放っていて上質だろう。

 そんなわけで“面白いお話”に期待すると、ちょっとハズす可能性のある映画(決してツマラナイわけではない)。なにしろグロだし。
 まぁ前述の通り退屈とは無縁だし、「グルヌイユが求めたもの」とか「その実在の可能性」などについていろいろと思索することもできる。余分なことを省いてグルヌイユの生き様を見せ切ることに徹しており、ナレーションは多いが言葉による説明だけに頼っているわけではなく(つまり映画にとって最も重要な「観せてわからせる」ことに配慮している)、そういう意味ではしっかり作られたシナリオでもある。
 が、やはり、グルヌイユの心境・行動や物語のテーマ性よりも、「さまざまな仕事が融合したもの=映画」としての面白さを味わうべき作品ではないかと思う。

 で、『花平バズーカ』を思い出したのは私だけだろうか?

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