マジェスティック
監督:フランク・ダラボン
出演:ジム・キャリー/マーティン・ランドー/ローリー・ホールデン/ジェリー・ブラック/ジェフリー・デマン/ジェームズ・ホイットモア/ブレント・ブリスコー/ボブ・バラバン/デヴィッド・オグデン・スタイアーズ/ロン・リフキン
30点満点中18点=監3/話4/出4/芸4/技3
【記憶を失くし、間違えられた男の“信念”とは】
大戦後、赤狩りの嵐が吹くハリウッド。脚本家ピーターにも、学生時代にある集会に参加していたことから共産党員の嫌疑がかけられる。おかげで製作中の映画はボツ、しこたま飲んだ彼はクルマごと川に転落し、田舎町ローソンの岸辺に流れ着く。記憶を失くしたピーターを歓迎する町の人々。彼のことを、出征したまま行方知れずの英雄ルークだと勘違いしているのだ。ルークの父ハリーは、これを機に、閉鎖していた映画館を再開しようとする。
(2001年 アメリカ)
【映画が人間社会に果たす役割を知る】
映画とは何か? 作り手にとっては自らの主張を詰め込んだ魂であり、観客にとっては歓喜と感涙を味わう時間であり、劇場主にとっては幸福を提供して自らもまた幸福を得るための場である。
そういうことを伝えたいために作られた作品。劇場『マジェスティック』のネオンサインの、なんと鮮やかで、なんと眩しいことか。
そうなんだよね、映画館って、すんごく“特別な場所”なんだ。
ほかにも、戦争とは何か、戦争で失われたものは何だったのか、その喪失の中で暮らす戦後とは何か、法律とは何か、自由とは何か……と、いろいろな問題提示が詰め込まれている。
最終的な回答というか、作者あるいはピーターなりの回答は最後の法廷シーンで示される。そこで述べられるのは「すべての約束は守られなければならない」という意識だ。
憲法は国と国民とが取り交わした守るべき契約だ。戦争への召集とは、国民に命を差し出させる代わりに国が掲げた「命を賭して守るべき故郷を維持していく」という約束だ。
そして「映画」もまた、作り手は観客を十二分に楽しませ、観客は全身で製作者と出演者の意志を汲み取ろうとする、そういう暗黙の約束の下で作られ上映されているのである。
この戒めをあらためて頭の中に叩き込むために、すべての製作者と映画ファンとが観るべき作品、といえるかも知れない。
作りかたとしては、ローソンがどんな人たちの暮らすどんな町であるかを自然に説明したりなど、上手さはあるものの、大きく構えたところのない極めてストレートなものとなっている。
登場人物たちの心情(演技)を目一杯に拾い上げようと、バストアップ中心の絵になっているのがひとつの特徴。ただ、微妙にサイズを変えたり動きを絡ませたりして単調さを排してある。
説教臭いところもあり、やや長めではあるけれど、いいたいことが素直に伝わってきて観やすい映画。なにより、本来は血のつながりのないふたりの人物が同じ笑顔で映るラストカットに、「映画が人間にとってどんな役割を果たしているか」がうかがえて、素敵な気分にしてもらえる。
MOVIE MUST GO ON!
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