ダブリン上等!
監督:ジョン・クローリー
出演:コリン・ファレル/キリアン・マーフィ/ケリー・マクドナルド/デヴィッド・ウィルモット/コルム・ミーニイ/トマス・オスーレーワウン/ブライアン・F・オバーン/シャーリー・ヘンダーソン/ディードル・オケイン/マイケル・マケルハットン/オーウェン・ロー
30点満点中17点=監3/話4/出4/芸3/技3
【絡み合う人間たちが引き起こし、巻き込まれる事件】
事故にあったバス運転手のミック、彼にある計画を持ちかけるレイフ、レイフを追う刑事のジェリー、ジェリーと組んで番組を作ろうとするTVマンのベン、ベンにインタビューされるサリー、サリーの姉デアドラ、デアドラと別れてイライラを募らせるジョン、その友人で不能に悩むオスカー、彼の新しい恋人ノーリーン、その夫でデアドラと不倫中の銀行員サム……。ダブリンで交錯する人間関係が、間の抜けた事件へと突っ走っていく。
(2003年 アイルランド/イギリス )
【シニカルで、ちょっと調子っぱずれ】
原題は『INTERMISSION』、すなわち休憩・幕あい。なるほどそういうことなのね。
ここで描かれているのは登場人物たちにとっての“人生そのもの”ではなく、息抜き部分というか、本編と本編の間を“つなぐ”小さな出来事、ということ。
いや、撃たれたり大怪我したりする人もいるので「小さな」とはいえないけれど、たとえばジョンとデアドラ、サムとノーリーンといった「ともに歩いていく人間関係」があくまでも人生の本編であるとするなら、それが壊れたり修復したりする瞬間に作用する“ちょっとしたこと”を描いた映画であることは間違いない。
あるいは、自分の人生に大事件なんか期待しちゃいけない、という戒めも含まれているだろうか。人生なんか、実は“ちょっとしたこと”の連続、その積み重ねでしかないのだと。
その“ちょっとしたこと”ばかり追いかけていることにウンザリしたベンも、結局のところ「仮に大事件があったとしても、自分は主役ではない」と自覚することになるわけだし。
なんともシニカル。そして、ちょっと調子っぱずれ。もうちょっとスマートでラブリーな人生の過ごしかたもあるだろうに、ここに出てくる人たちはとにかく回り道と幕あいがお好きなようだ。
手ぶれとズーム。最近ハヤリの、手持ちカメラであることを強調するような絵作り。ちょっと酔いそうになるが、このグラグラ感が、画面の中でおこなわれていることの緊迫感とマヌケさ加減を同時に増加させる。
そう、ここにあるのはヒリヒリしてるけれどマヌケな世界。人生は闇、人生はクソッタレ。そんな中で、“ちょっとしたこと”に揉まれてあがいている人たち。
でも、ヒリヒリとか闇とかマヌケとか“ちょっとしたこと”が人生のすべてだといっているわけじゃない。その向こうに、その陰に、お前さんにとって大切なものがあるんだよ、という映画。
または、やっぱ人生なんかクソッタレなんだから、その中でエンジョイする手段を見つけましょうよ、というメッセージ。
といっても人にモノを投げつけるエンジョイ方法には感心しませんが。
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