アンジェラ
監督:リュック・ベッソン
出演:ジャメル・ドゥブーズ/リー・ラスムッセン/ジルベール・メルキ/セルジュ・リアブキン
30点満点中16点=監4/話2/出4/芸3/技3
【どうしようもない男のもとに、それは舞い降りた天使】
世界をまたにかける実業家、というのはウソっぱち。チビで冴えない男アンドレはあちこちに莫大な借金を作り、今日中に返さないと殺されるという窮地に立たされて夜のパリを彷徨う。とうとう橋の上から身投げしようと欄干を越えるアンドレだったが、一歩先に飛び込んだ女性を助けてしまう。その長身痩躯で金髪の美女はアンジェラと名乗り、アンドレに付きまとって奔放な方法で彼をピンチから救う。果たして彼女は、天使なのだろうか?
(2005年 フランス)
【解釈は、僕ら次第】
たぶんリュック・ベッソンは、映画作りがイヤになっちゃったんだな。あるいは映画のほうがベッソンを嫌ったのか。
とりあえず面白そうなアイディアを並べて若いモンに撮らせとけば、なんとなく上手くいくじゃーん、ということを続けた結果、情熱とかモチベーションが薄くなってしまったのだ。
これじゃイカンと一念発起、ホントに撮りたいものを模索する。そうして出来上がったのが、自分の中に眠っている映画愛を呼び覚まし、売れ線ばかりを要求するプロデューサーに罵倒を浴びせるかのように借金取りフランクをやりこめ、映画という天使を力ずくで引き寄せる、つまりは本作。
初心に帰って撮りたいものを撮った、と考えれば、モノクロ作品ということに納得もできる。トイレの中でボコられる男どもというのは、さしずめ、「わかりやすくて気持ちいい作品を観ている気分になっているけれど、実は作り手からバカにされている僕ら観客」といったところだろうか。
というのが、ちょっとイジワルな解釈。 もう少しストレートに接すれば、目に見えないものをどう理解し、どう信用し、どんなふうに自分の人生の中に組み入れるか、といったテーマが読解できる。見えるものだけをアテにしていちゃ、生きてはいけないのだ。
そうして自分の人生または自分自身=個を確立するためには、過去の経験や意志・意欲が必要となる。でも、頼るべき過去がなかったら? 意志と意欲を持つことを許されない存在だったら?
じゃあ、いま、ここから始めればいい。いま意志と意欲を胸に抱いて、ここから未来を作り上げていけばいい。そんなメッセージ。
いずれにしても、笑えたりハラハラしたりはするけれど娯楽作ではないわけで、60~70年代風のカットの中に冒険が混じり、特撮も見事だしシーンのすっ飛ばしかたも小気味いいし、顔も歩き姿も行動もとことん情けないアンドレ役ジャメル・ドゥブーズは適役、正体不明のアンジェラ役リー・ラスムッセンもいい味を出しているのだけれど、観るのにちょっぴり脳みその体力を要する作品だ。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント