ワイルドバンチ
監督:サム・ペキンパー
出演:ウィリアム・ホールデン/アーネスト・ボーグナイン/ウォーレン・オーツ/ベン・ジョンソン/ジェイミー・サンチェス/エドモンド・オブライエン/エミリオ・フェルナンデス/ロバート・ライアン
30点満点中17点=監4/話2/出3/芸4/技4
【砂と酒と女と銃弾……。悪党どもの末路】
開拓時代の西部。パイク、ダッチ、ゴーチ兄弟、エンジェル、サイクス爺さんらは「最後の仕事」として駅舎を襲うが、鉄道公安主任の計略による待ち伏せに遭って逃走する。追っ手はパイクの元相棒ソーントンに率いられたゴロツキどもだ。パイクたちはメキシコ独裁を目論むマパッチ将軍のもとに身を寄せ、その依頼により、軍の輸送列車から武器弾薬を強奪する計画を実行に移す。報酬は巨額。今度こそ「最後の仕事」になるはずだったが……。
(1969年 アメリカ)
【アクションの陰に潜む鬱屈した空気】
オリジナル・ディレクターズ・カット版での鑑賞。
マパッチとその一味がバカすぎることと、中盤の展開がややクドくて間延びしてしまっている感はあるものの、静から動への急激なシフト、随所に散らされた銃撃戦が映画を引き締める。逃げる者たちを「ただ逃がす」のではなくちょっとしたアイディアやエピソードをそこに盛り込むし、種類や撃つ場所によって銃声の質感を変えるなど、細かな部分にも注意が払われて作られている。
いまさらいわずもがなだが、戦闘シーンの迫力は上質。血しぶきとスローモーション&とんでもない編集がもたらすヒリヒリ感だけでなく、余計なセリフを挿入せず問答無用で撃ちまくり、と同時に「おこなわれていることの凄さ」をきっちりと描いてみせる(ラスト近く、パイクと女との関係なんか凄いのひとことだもんな)のがいい。
そのアクションが最大の売りであり、また、タフガイの主人公、ストイックな敵役、兄弟、爺さん、ギターを弾く若者、ハーモニカをフィーチャーした音楽、メキシコ……とフォーマート通りの西部劇であるともいえるが、そこに「苦悩」という味付けが施されるのもポイント。
たぶんこれは、この時代に世から消えてなくなりつつあった悪漢への惜別の映画だろう。あるいは、時代、仲間との決別、たいしたことのできなかった人生など、いろんなことが混じりあい、パッチに「やるせなさ」を覚えさせ、彼に死に場所を探させるための物語。
冒頭で示される“なぶり殺し”の暗示、見慣れぬ乗り物=ガソリン自動車の登場、あちらこちらに配される子ども=新しい世界の象徴、「この仕事をやめてどうする?」と聞かれて返答に困るパッチ……。行き場をなくした男たちの悲哀が底辺に漂う。
しばらく仕事を干されていたサム・ペキンパーの叫び、という分析もあるようだが、なるほどその意見に賛成したくなる空気だ。
鬱憤を晴らすかのように銃弾の雨を降らせ、けれど鬱憤しか残らない。そんな皮肉を詰め込んだ作品でもある。
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