タブロイド
監督:セバスチャン・コルデロ
出演:ジョン・レグイザモ/レオノール・ワトリング/ダミアン・アルカザール/ホセ・マリア・ヤスピク/カミロ・ルスリアーガ/グロリア・レイトン/ヘンリー・ラヤナ/アルフレッド・モリナ
30点満点中18点=監4/話4/出4/芸3/技3
【連続殺人と事故との接点で、真実が“撮影”される】
幼い子どもばかり手にかける連続殺人犯“モンスター”を追ってエクアドルのババオヨを訪れた3人、ドキュメンタリー番組『真実の1時間』の現場リポーターとして絶大な人気を誇るマノロ、プロデューサーのマリサ、カメラマンのイバン。彼らの目前で交通事故が起こり、その加害者ビニシオはリンチを受けたうえで投獄される。スクープの匂いを嗅ぎ取ったマノロは「俺を助ければモンスターについて話す」というビニシオに接触する。
(2004年 メキシコ/エクアドル)
【完成度の高い1本】
たっぷりの臨場感とともに、出来事と各登場人物の思惑とが撮影される。マノロやビニシオの至近距離でカメラは回り、肌に浮かぶ汗、呆然と立ち尽くす姿、唇をなめる様子がうつされる。ハエが飛ぶ音、咳払い、形を成さない周囲の雑音まで丁寧に拾い上げていく。
観客をその場に置き、真実の目撃者に仕立て上げようとするように。
この作りが、ラストカットにズシンと響いてくる。孤独な空気の中に吐き出される、強烈なまでの息遣い。やるせなさだけが残る内容ではあるが、なかなか計算された構造の映画だ。
その枠の中で、功名心と鋭さを眼光に宿すマノロ=ジョン・レグイザモ、報道者としてのスタンスも女としての生きかたもまだ確立できていないマリサ=レオノール・ワトリング、職業カメラマンの役割が身に染み込んだイバン=ホセ・マリア・ヤスピク、得体の知れない苦悩する男ビニシオ=ダミアン・アルカザール、そして彼らの周囲の人々が、よく動き、よく表現し、それぞれの役柄をまっとうする。
酒瓶、漂白剤、電話、ビニシオについて語る人たちといったアイテムも、ストーリーを面白くするものとしてきっちりと機能する。
電波に乗せられれば、それが真実となる。いいたいことをいい切り、やりたいことをやり切った、完成度の高い1本だ。
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