デュエリスト
監督:イ・ミョンセ
出演:ハ・ジウォン/カン・ドンウォン/アン・ソンギ/ソン・ヨンチャン
30点満点中15点=監3/話2/出3/芸3/技4
【決して出会ってはいけなかったふたり、交わる剣】
偽造された金が大量に出回り、頭を悩ませる朝鮮王朝。捕盗庁の刑事、ナムスンとアンは市場で容疑者を追い詰めるが、仮面の剣士に邪魔をされて取り逃してしまう。仮面の向こうにあった剣士の“悲しい目”に吸い込まれそうになるナムスン。やがて捕盗庁は、政府の高官・ソン長官が偽金と関係しているらしいと知り、ナムスンとアンは潜入捜査の任にあたる。宴でにぎわう長官の館には、あの“悲しい目”をした剣士が待っていた……。
(2005年 韓国)
【狙って失敗した、退屈な作品】
剣戟を中心としたアクションといい悲しい運命といい色使いといい、明らかにチャン・イーモウを狙って失敗した作品だな、こりゃ。
いや、なかなか頑張っている部分もあるのだ。狙っただけあってアクションには切れがあるし艶やかな衣装など色彩感覚も上質。雪の街を美しく作り上げた美術の仕事もいい。光と影の使いかたなんか、かなり面白い。多彩な表情で精一杯にナムスンを演じるハ・ジウォン(顔立ちも芝居も松たか子とダブって仕方なかったけれど)、確かに悲しい目をしているカン・ドンウォン、ともに美しい。
まさしくスタイリッシュ。でも、なぜかワクワクできない。
理由の1つが、スローモーションとストップモーションの多さだろう。冒頭の15分がほとんどスローモーションとなっているほか、体感では上映時間100分のうち80分がスロー。おかげで各シーンからも全体の展開からもリズム感が失われている。
また、舞台劇のテイストを取り入れた立ち居振る舞い、70年代ホームコメディのような、カメラに写されていることを意識した演技と人の動き、妙にカッコいい人相書き、コミックの映像化にも思えるアングル、セルの使用量を抑えたアニメのような絵作り……などがゴッタになって、なんとも落ち着かない見た目となってしまっている。
リアリティよりも様式を重視した結果、語り口のまずい作品に仕上がってしまった、という印象だ。
本家チャン・イーモウも様式重視だけれど、もっとスマートだった。「ここが見せ場だ!」というメリハリのつけかたももっと上手かった。スピード感も本作のほうがはるかに劣る。『HERO』も『LOVERS』も「その場その場に応じた表現や凝りかた」で、ちょっとしたエピソードも見ていて面白いものにしていたぞ。
それに比べてこっちは、薄ぅい話をやたらとスロー&もったいぶった雰囲気作りだけでなんとかしようとして、なんともならなかった感じ。
ちゃんとハ・ジウォンの吹替えには、しいちゃん(小川範子)を起用していたのは評価できるのだが。う~ん、そこそこ派手なんだけど退屈な映画だったなぁ。
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