ベルベット・レイン
監督:ウォン・ジンポー
出演:アンディ・ラウ/ジャッキー・チュン/ショーン・ユー/エディソン・チャン/リン・ユアン/ウー・チェンリン/チャップマン・トー/エリック・ツァン
30点満点中16点=監3/話3/出4/芸3/技3
【狙う者、狙われる者、守る者】
香港黒社会の大物ホンが鉄砲玉に狙われていることが明らかになる。そんな折、ホンに男児が誕生。片腕であるレフティはホンに対し、妻子を連れて国外へ脱出するよう忠告するが、ホンは聞き入れようとせず、逆に冷酷非情なレフティのやり口を諌めるのだった。ゲームに勝って鉄砲玉の役割を得た若いチンピラのイックは、相棒のターボとともに最後の食事を、娼婦ヨーヨーとともに最後のひとときを楽しむ。運命の日、雨が降り始める……。
(2004年 香港)
【好きな部分もあるだけに、描写不足が惜しい】
ずんちゃかどんどんと、やかましく響くBGM。スローモーションに露出アンダー、水槽越しの画面、ゆっくりと動くカメラ。ほとんどビデオクリップのノリで展開していく。
この雰囲気は明らかに“やろうとしたこと”とミスマッチだ。いや、スタイリッシュにまとめようとしたことはいいとしても、それに力を入れすぎたあまり、描くべきことを描けなかった感がある。
この構造、このストーリー、このエンディングなら、ホンとレフティの義兄弟としてのつながり、ホンがいかにして黒社会を仕切るまでに至ったか(を匂わせるエピソード)、レフティがホンに抱く屈折した想い……などをたっぷりと盛り込むべきだったはず。
たとえばふたりで赤ん坊を見ているシーンとか、ホンが切った料理を隻腕のレフティが何もいわずに食べるところとか、確実に「このふたりが主役」と思わせる名場面があるのだから、そこをもっともっと掘り下げて、ホンとレフティの人物造形を深めるべきだったろう。
若いチンピラ・パートも同様で、ターボがイックをかばい続ける理由につながるエピソードを何かひとつ、印象的に挿入できれば、より奥行きのある映画になったのではないか。
幸いにもアンディ・ラウがかっこよく、エディソン・チャンも奔放な芝居を見せて、それが映画を面白いものにしてくれているが、あまりに割愛をしすぎたために性急となってしまっている。
同じく裏社会が舞台&友情をテーマとした『友へ チング』でも「つながりの描写が不足」としたが、それにも増して、肝心なところが薄い物語。
あと30分長くして不足を補い、また、本作に仕掛けられた“タネ”をギリギリまで引っ張れるくらいの緊迫感を出せたなら、名作になったかも知れないのだが。
好きな構造の映画だけに、惜しいなぁ。
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