アサルト13 要塞警察
監督:ジャン=フランソワ・リシェ
出演:イーサン・ホーク/ローレンス・フィッシュバーン/マリア・ベロ/ドレア・ド・マッテオ/ジョン・レグイザモ/アイシャ・ハインズ/ジェフリー・“ジャ・ルール”・アトキンス/ブライアン・デネヒー/ガブリエル・バーン
30点満点中16点=監4/話2/出4/芸3/技3
【完全包囲された分署で、警官と悪党の共闘が始まる】
雪の大晦日。13分署は移転のための引越し作業を終えようとしていた。残っているのは巡査部長のジェイク・ローニック、秘書のアイリス、退官を決意したジャスパーだけだ。そこへ裏社会の大物マリオン・ビショップら護送中の囚人たちが運ばれてくる。さらに正体不明の一団が分署を包囲して攻撃を開始、外部との連絡手段も絶たれてしまう。ローニックは囚人たちに銃器を渡し、謎の武装集団に対抗しようとするのだが……。
(2005年 アメリカ/フランス)
【完全な駄作になる寸前で踏みとどまった】
映画は、なんらかのキッカケでいい方向にも悪い方向にも転がる。本作は一歩間違うとダサダサの駄作になってしまいそうなところを、いくつかの要素によって「観られる」レベルに踏みとどまることのできた例。
マズイのは物語・脚本。早々に武装集団の正体と襲撃の動機を明らかにしたことに加え、分署内部の警官VS囚人の対立もサラっと済ませてしまったため、本来ならもっと「誰が敵で、誰を信用すべきか」とヒリヒリした緊迫感が漂うはずの設定なのに、単なる「外と中の打ち合い」に収束してしまっている。
また、それだけ重要な囚人を護送するのにいかにも護衛が手薄、アレックスは精神分析医なのにすぐ切れる、これだけ撃ち合いをしているのに警察がやってこない……など、リアリティの薄さが気にかかる箇所も多い。雪の大晦日という舞台設定や囚人たちのキャラクター設定も十分に生かされているとはいいがたいし、前半部がいかにも人物紹介的な展開になっているのもいただけない。
そんな不完全な話をソコソコの水準にまで引っ張りあげたのが、これがメジャー長編デビューとは思えない監督の安定した演出だ。
臨場感あるオープニングに始まり、全体にテンポよく見せる。逆にいえばアクション大作っぽいストレートな作りであるため前述の通りヒリヒリ感を十分に出せなかったのは痛いのだが、鏡や雪を上手に使った映像的工夫もあり、かといって独りよがりの見せかたに走ることもなく、堅実に澱みなくお話を進めていってダラダラにならなかった点は買える。
人物を右から捉えたカットと左から捉えたカットで微妙に口の開きかたが違う、といった編集の悪さはあるものの、スピード感と迫力のある絵を最後まで持続させていたように思う。
キャスティングも良質。もう少しキャラクターの掘り下げやインパクトは欲しかったが、堂々の歩き姿を見せるローレンス・フィッシュバーンをはじめすべての人物がピタリと役柄にハマっていて、浮いている役者・キャラクターが見当たらないのがいい。
というわけで、まあまあのレベルには到達。ガン・アクションにはもっともっと質の高い映画はあるし、不足している要素も多いためこれ以上の評価はできないが、16点という点数ほどには悪くない。この監督、プロジェクト次第では化ける可能性もあるはず。次回作はチェックしたい。
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