ディバージェンス-運命の交差点-
監督:ベニー・チャン
出演:アーロン・クォック/イーキン・チェン/ダニエル・ウー/アンジェリカ・リー/ロー・ガーリョン/ニン・チン/エリック・ツァン
30点満点中16点=監3/話3/出4/芸2/技4
【運命と業に翻弄される男たち】
マネーロンダリング事件の証人を護送中、何者かの狙撃を受け、大切な証人を撃ち殺された商業犯罪課の刑事シュン。容疑者である大会社の社長イウの差し金と踏んだシュンは、彼の弁護士であるトウの周辺を洗う。が、そこで見つけたトウの妻エイミーは、10年前に失踪した彼の恋人フォンとうりふたつ。いっぽう狙撃犯のコークは、ある理由からシュンに接近する。さらにイウの息子が誘拐されたことで、事件は意外な方向へと転がり始める。
(2005年 香港)
【パーツのまとめかたに難あり】
昨今流行(?)の香港製フィルム・ノワール。が、スタイリッシュに仕上げようとしてちょっと失敗、安っぽくてやかましいBGMや意味のないスローモーション、出てくる人がみんなカンフーの使い手など、香港映画の“ありゃりゃ”ばかりが目立つ作品になってしまった。
いや、良作に仕上がり切らなかったのは、そうした“ありゃりゃ”パーツよりもむしろ、バランスを取ろうとしすぎて各方面とも中途半端になってしまったのが原因か。恋人を失ったシュン、依頼人が悪人ばかりの弁護士トウ、初仕事の記憶を引きずる殺し屋コーク、それぞれの苦悩を等分に描こうとしたばっかりに、どれもが突っ込み不足になってしまった感がある。
等分はいいんだけれど、だったらもう20分長くして、事件にひとひねりを加えつつ男3人(+イウ社長)の心情を掘り下げるべきだったろう。
とはいえ、いい面もあって、まずは画面の色合い。青みを強めた色調とザラザラした質感は、犯罪映画によく似合う。特にアジア圏の温帯における撮影では、高い湿度と空気の悪さからスミっぽい絵(粒子の中に不要な黒の成分が混じった状態)になってしまいがちだから、こうした処理は画面にコクと深みを与えるための正しい方法論ではないかと思う。
もうひとつがクルマの使いかた。焦りを抑え切れないように、あるいは呆けたようにシュンがドライバーズ・シートに収まっているシーンは、なかなか印象的。逆走、暴走、横転、クラッシュと、クルマそのものの使いかたにも迫力がある。
またシュンとコークの追跡劇も、ただ「逃げて追う」だけではなくさまざまなハプニングを“おかず”として組み込んでいて、映画にスピード感と厚みがもたらされている。
あとは役者。シュン役アーロン・クォックの汗臭さと、殺し屋コークを演じたダニエル・ウー(ジャッキー・チェンの秘蔵っ子らしい)のカッコよさが光る。どちらも過剰な香港演技になりすぎていない(まぁそれでもオーバーアクションなんだけれど)のがいい。
と、各パーツには“ありゃりゃ”だけでなく見るべきものも多い。けれど、そのまとめかたに難があるというか、詰め切れなかった印象の残る作品だ。
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