奥さまは魔女
監督:ノーラ・エフロン
出演:ニコール・キッドマン/ウィル・フェレル/ジェイソン・シュワルツマン/ヘザー・バーンズ/クリスティン・チェノウェス/マイケル・バダルッコ/キャロル・シェリー/スティーヴ・カレル/シャーリー・マクレーン/マイケル・ケイン
30点満点中15点=監3/話2/出4/芸3/技3
【魔女役に抜擢されたのは、ホンモノの魔女だった!?】
主演映画が連続してコケたおかげで落ち目のジャック・ワイアット。『奥様は魔女』リメイク版への出演が決まったが、自分を引き立たせるため、サマンサ役には新人の起用を要求する。抜擢されたのはズブの素人イザベル。ところが彼女は本物の魔女。普通の生活がしたい、普通の恋がしたいと願って人間界で暮らし始めたところだったのだ。「君が必要だ」というジャックの甘い言葉(?)に恋の始まりを感じるイザベルだったが……。
(2005年 アメリカ)
【オープニングとキャスティングとフレーミングがポイント】
妻にとってのカルチャー・ショックの素が『奥様は魔女』(ビデオ・ボックスも持っている)。確かに、玄関を入ってすぐのところにあるあの階段や豪華なキッチンなど、サマンサ&ダーリンの家には、当時の日本ではあり得ないデザインとライフ・スタイルが満ち満ちていた。
で、本作でもあの階段が再現され(チラっとしか映らないけど)、エリザベス・モンゴメリーとディック・ヨークも登場し、懐かしの「ピコピコピ」は何度も聴けるし、オリジナルに対するリスペクトたっぷり。
でも、なぁんか楽しくない映画なんだな。
オープニングは極上。簡潔かつ軽快にイザベルが新生活をスタートさせる様子が描かれる。その後も、ニコール・キッドマン(うわっ、同い年だったのか)はキュートだし、マイケル・ケインは“娘を不安に思うイタズラ好きなパパ”の様子をリラックスして演じているし、シャーリー・マクレーンはエンドラにハマりすぎるほどハマってるし、イヤミにならない笑いも細かく挟まれるし、と、なかなかいい雰囲気。音楽も女性のチャーミング(魔法的な魅力)な部分を取り上げた曲でまとめられている。
ところが『奥様は魔女』の撮影に入るあたりから、少しずつダレ始める。原因は明らかにジャック・ワイアット。こいつウザい。価値観が前触れなくコロっと変わり、たえずわめき立てている。いくら嫌われ者の設定だからといっても“いいところがひとつもない”と観客に思わせるってのは、どうなんだろう。ウィル・フェレル自身にも華がないうえに下手だし。
ひょっとすると「スターを引き立たせるため、女優には素人のイザベルを起用する」というストーリー設定を逆転させて、「キャスティングはオスカー級のスターばかり、その中に素人同然のコメディアン」という図式を作りたかったのかも知れない。
それでイザベルが人気者になったのと同様、ウィル・フェレルにもスポットが当たればよかったんだけれど、それだけの器じゃないし魅力の持ち主でもなかった、という感じだ。
中盤以降は語り口も冗漫になってしまう。「巻き戻し」はまずまず面白いアイディアだが、全体に1シーンが長くてリズムが悪い。しかも「イザベルと誰か(主にジャック)が喋っている場面」がほとんど。それを、さして工夫もバリエーションもないフレーミングで撮るもんだから、かなり退屈な展開と絵が続くことになる。コメディらしい“弾け”がないのだ。
もともと「魔法に頼らず生活と恋をしたい魔女」と「彼女の純真さに惚れる横柄なスター」というふたりが融和へと進む予定調和的なストーリー、どういう結末になるのかはわかっているんだから、せめてテンポよく、意外性のあるエピソードをポンポンとたたみかけていくべきなのに。
いい部分もけっこうあるんだけれど、それを、主演男優と語り口のまずさが壊してしまった不完全コメディだ。
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