TWO LOVE 二つの愛の物語
監督:橋本直樹
出演:時任三郎/康汰/島綾佑/眞島秀和/水橋研二/吹越満(以上「キャッチボール」)/森田直幸/柳生みゆ/江口のりこ(以上「君と歩いた道」)
30点満点中16点=監3.5/話3.5/出3.5/芸3.5/技2
【働く父/彼女が生きていることに乾杯】
東京から新潟へと向かう、ユニフォーム姿の幼き兄弟。単身赴任中の父とキャッチボールをするのだ。その頃、住建会社に勤める父は休日を返上してアクシデントの処理に追われていた……「キャッチボール」/2学期最初の暑い日、将来の夢をテーマとする作文に悩む中学生・河原大吾は、転校してきた木原真琴に恋をする。家は、大吾の住まいの斜め前。しかし真琴には他人にいえない秘密があり、誰にも心を開かなかった……「君と歩いた道」
(2005年 日本)
【好対照の2本】
わが浜田省吾の曲をモチーフとする中編2本。
正直いうと「キャッチボール」のモトとなった『I am a father』は、ストレートすぎるというかわかりやすすぎるというか、自分の考える“浜省らしさ”とはちょっと違う気がして、特別好きな曲ではない(コンサートではイントロで結構な歓声があがるんだけれど)。
それに、観る者の想像力を刺激するビデオクリップの完成度が高かったため、わざわざ1本の映画にまとめなくてもいいんじゃないの、という思いもあった。
ところが意外、いいんだわ、コレ。
語りすぎないのが、いい。丸太を積んだトラックが事故を起こした理由、トイレで鳴った携帯電話のその後など、映像を読み取り、考え、想像してニヤリとする、そういう余地を残してある。頭の悪い説明過剰のシナリオになっていないのだ。
ナチュラルな演技を見せてくれる子役も良質で、彼らのふくれっ面や笑顔を適度な距離感で捉えてくれるのも楽しい。駅員に頭を下げる姿からは、この子たちが「しっかりと育てられている(または育っている)こと」が伝わってくるし、登場する人物それぞれに家族がいるであろうことを感じさせるキャスティング、各人の目の芝居も上等。
当然のように『I am a father』がエンディングで流れ、その内容と本編とのマッチングもいい。ストーリーとしてはベタだと思うのだが、不覚にも泣いてしまった。
ただ、カメラがホームビデオ並みにフラフラするのが傷。意図なのかどうなのか、それが味わいになっているのならいいんだけれど、どちらかといえば安っぽさにつながってしまっていた。また時おり挟まれるスローモーションが、やけにカクカクしていたのも目障り。使用されるBGMも浜省ワールドとは遠く、その点も残念だった。
そうしたマイナス部分については「君と歩いた道」も同様。ただしこちらは逆に語りすぎの感がある。ロケーションや主役ふたりの雰囲気はいい(真琴が白のワンピースを着てきた日にゃ「やばっ」と思った)のだけれど、思春期だけに許された無謀で無防備で無垢な心のありようを描くことを独白に頼っていて、映画としては評価しにくい。
また原曲の『君と歩いた道』には“振り返る大人の目線”があり、それゆえ聴くたびに涙してしまうほどなのだが、本作は現在進行形になっていて、そこに違和感も持ってしまう。完成度の高い曲を別のカタチに作りかえることじたいが無茶だったのかも知れない。
まぁ『君と歩いた道』と『Thank You』が、こんなふうにつながるとは思ってもみなかったので(自分にとって、2つの曲に登場する女性は別なんだよね)、そこに新鮮な驚きはあったのだが。
そんなわけで「キャッチボール」が17点、「君と歩いた道」が15点、平均して16点。
いうまでもないが、浜田省吾のアルバムを聴いたりコンサートに行ったりするほうが、よっぽどノれて感動できることは確かだ。
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