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2007/07/06

仮面ライダー THE FIRST

監督:長石多可男
出演:黄川田将也/高野八誠/小嶺麗奈/ウエンツ瑛士/小林涼子/津田寛治/板尾創路/佐田真由美/辺土名一茶/宮内洋/天本英世

30点満点中15点=監3/話2/出3/芸3/技4

【謎の組織ショッカーに改造された男たちの運命】
 雑誌記者・緑川あすかは、同僚で婚約者でもある矢野克彦とともに連続失踪事件を追っていたが、仮面を被った怪人に襲われて矢野が死亡する。最近取材したばかりの大学院生・本郷猛が犯人だと思い込むあすか。実は本郷は事件を陰から操る謎の秘密結社ショッカーの手で改造された“ホッパー”であり、自意識を取り戻して組織から離れ、あすかを守ろうとしていた。そこへ矢野そっくりの一文字隼人が、新たなホッパーとして現れる。
(2005年 日本)

【これでいいのだ、で、すませるべき点と問題点】
 僕らは仮面ライダーで大人になった。放送は毎週観ていたし、スナックも買ったし、スタンプカードも集めた。大きな子がいるときには2号をやらせてもらって、小さな子が混じればドクトルGを担当し、そうやって子どもは子どもなりの社会を作っていたのだ。

 だから、仮面ライダーを悪くいうことはできないんである。
 急に日が暮れても、ヒールが折れたり病気を悲観して屋上から飛び降りようとしたり浜辺で男女が戯れたりといったベタベタなシーンの連続でも、どこなんだかよくわからない舞台設定でも、ボンと殴られて転んだ次のカットで戦っている場所がまったく変わっていても、馬鹿力で殴られても平気なライダーが階段から転げ落ちただけで苦しんだとしても、大事件なのに警官がまったく出てこなくても、そもそもショッカーの狙いがまったくわからなくっても、説明調で幼稚なセリフをインチキ臭いキャストがたどたどしく話したとしても、岩場から急にバイクが飛び出してきても、BGMや主題歌が安っぽいものだとしても、そういうことに、いちいち目くじらを立ててはいけないのだ。
 だって、これが仮面ライダーなのだから。強引で、脈絡がない展開でも構いはしないのだ。リアリティなんて求めちゃいけないのだ。点数だって、ちょっと甘めにつけてあげなくてはいけないのだ。

 それに、拍手したいところだっていっぱいあるじゃないか。
 ビルから飛び降りて着地するシーンの迫力をはじめ、アクションには全体としてキレがあるし、ライダーや怪人たちの造形も上々。決めポーズも、ところどころに潜ませた「オリジナルを知る人たちへのサービス&ノスタルジック・ショット」であることが嬉しい。“ホッパー”というネーミングも、悪の組織っぽくていい。
 邦画的でもTVドラマ的でもなく、もちろんハリウッド的でもなくて、いうなればオタク的というか、対象物を真っ向から捉えて悪びれない特撮アクション系の絵作り(さすがにTVよりグレードアップしているが)。しかも、クルマや花の赤、夜の街、エナメリックな怪人たちのコスチュームなど、色と質感を重視した空気がカッコイイ。
 久しぶりに見た小嶺麗奈は相変わらずキレイだったし、『ZOO』で「拙いながらも清清しさがある」とした小林涼子を、そのまんまの演技でまた観ることができた。

 と、ひと通り擁護したうえで、文句をつけるべき点は多々ある。

 もっと哀しくしてくれよ
 仮面ライダーは、ヒーローであってヒーローではない。同じ石ノ森章太郎原作の『サイボーグ009』もそうだが、意図せず強大な力を持ってしまった改造人間の戸惑いや哀しみを描き、それでも自らに使命を課して前進しようとする姿、というのが底辺にある物語ではないのだろうか。それを描いてこそ『THE FIRST』と名乗る資格も持てるはずだ。現状の本郷猛では、なんだか人のいい力持ちストーカーである。彼の孤独がまるで出ていない。バイクに乗っている意味もあんまりないし。一文字隼人なんかもっとひどくて「お前、何者やねん」レベル。ていうか、たぶん設定書には「ホスト風だが、意外といいヤツ」としか書いてなくて、それをそのまんま形にしただけだな。主役ふたりの葛藤は、ほぼゼロだ。
 ウエンツ=晴彦の扱いも同様で、愛とか限りある命とかを絡めて『中学生日記』くらいの葛藤話にはまとめられる可能性を持つエピソードだったが、あくまで「ちょっと思いついてみた仕掛け」のためだけの存在になってしまっている。

 制作サイドに「こういう作りでいいんだ」「なんやかんやいわれようが、これが仮面ライダーなんです」という開き直り、ひょっとすると「え? どこがダメなの」という錯覚があるのかも知れない(真っ当に映画・ドラマを作るのに必要な力が不足している、という可能性もあるが)。
 そこからの脱却を果たさない限り、映画を作っても、手を変え品を変えて新たなライダーを送り出したとしても、この『仮面ライダー』というジャンルに未来はない

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