銀色の髪のアギト
監督:杉山慶一
声の出演:勝地涼/宮崎あおい/遠藤憲一/古手川祐子/濱口優/布川敏和/大杉漣
30点満点中13点=監2/話1/出3/芸4/技3
【侵略する森、止めるのか、共存するのか】
植物の暴走により人類のほとんどが死滅した未来、凶暴な森との共存を図りながら質素に暮らす中立都市の人々。ある日アギトは森の奥深くで、睡眠装置から目覚めたばかりのトゥーラと出会う。あまりに変貌した世界を目にして戸惑う“過去からやって来た”少女。彼女はまた植物の暴走についての秘密を握る存在でもあった。トゥーラの協力を得て地球を元の状態に戻そうと、同じく“過去からやって来た”男シュナックが動き始める。
(2005年 日本/アニメ)
【いいところを見つけにくい】
明らかにリアリティを放棄した内容。ま、それも限度をわきまえているのならいい。映画を面白いものにしようという意気込みがあるならいい。たとえば物語の前提にある「意志を持った植物」や「植物の暴走によって変貌した未来の地球」といった設定は、許容範囲というか、この世界を魅力的なものとするために、あるいは深刻な環境問題ゆえにほとんど滅亡寸前の状況にある人類社会に対する警鐘として、あっていいと思う。
でも、それ以外のディテールはね、ちょっと度を越しすぎでしょ。
水から出てきた人の服や髪が濡れていない(濡れていたのはトゥーラのサービスカットのみだったな)のはなぜ? 自分が乗っている列車をボカボカ撃つのはなぜ? 「こんな山の中にあったとは」と言いつつそこまで鉄道が通っているのはなぜ? あれだけのシステム、崩壊しつつあった世界でどうやって作ったの? 何百年もの間どうやってメンテナンスしていたの? あんな簡単に起動できちゃっていいの? 動力源は何やねん? どんだけのマグマがあの小さな山の中に詰まってんねん? 「アギトだ!」って何キロも先からなんでわかったん?
とにかく、解せないことだらけ。
これ、ギャグアニメでしたっけ。荒唐無稽さがファンタジーとしての面白さへと昇華しているならまだしも「なんでもアリで緊迫感ゼロ」へと向かってしまっている。
ったく屁みたいな話だな。枝葉やふくらみもないし。
アニメ/映画としての作り的にも苦笑してしまう。ところどころ妙に力の入ったCGが画面で浮いてしまっているし、各人の動機や世界の成り立ちといった肝心な点をセリフで処理するところが目立つし、ヘンなブラックアウトや間(ま)がテンポを削ぐし。
このレベルの作品の割にはかなり聴かせるKOKIAによるテーマ曲および岩崎琢の音楽、むちゃくちゃ渋い遠藤憲一の声くらいしか、いいところを見つけにくい映画である。
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