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2007/08/09

ミクロの決死圏

監督:リチャード・フライシャー
出演:スティーヴン・ボイド/ラクエル・ウェルチ/アーサー・ケネディ/ドナルド・プレザンス/ウィリアム・レッドフィールド/エドモンド・オブライエン/アーサー・オコンネル

30点満点中16点=監3/話3/出3/芸4/技3

【ミクロ化された潜水艇と医師、体内を往く】
 物質を細菌レベルにまで小型化する技術が完成。だが、その大きさを長時間維持する方法を知るベネシュ氏が敵の襲撃を受け、脳内出血の傷を負う。手術のためには体内に潜入するしかない。軍のリード、医務部長のマイケルス、デュバル博士と助手のカーラ、オーエンス艦長らの乗り込んだ潜水艇は小型化され、デュバルの血管へと送り込まれる。タイムリミットは60分。抗体や白血球からの攻撃を潜り抜け、手術は無事に成功するのか?
(1966年 アメリカ)

【スリリングな序盤、キッチリとした仕事】
 当時隆盛を誇ったトランス・ワールド航空のジェット旅客機が飛ぶ姿で映画は幕を開ける。飛行機って、あんなに重いのになんで飛ぶの? という「わけのわからん技術」や「どでかいモノ」に対する畏怖から物語がスタートする、というのがなんとも象徴的。

 ここから、ものものしい数の警備兵、列をなすクルマ、暗闇、ライトによる合図、襲撃……と続く序盤の展開が圧巻。セリフなしのスペクタクルからオープニング・クレジットへと至る緊迫感は極上だ。

 そしてようやくの状況説明から、いざプロテウス号に乗って体内へ。CGなんてなし、手作り感いっぱいに作り上げられた美術(ダリがデザインしたらしい)は、チープながらも妙な説得力がある。ホントに体内を旅している気分。と同時に、精密に創造された人体=「ちいさな世界」の不可思議さも感じさせる。なるほど本当に神秘的な場所、畏怖すべき存在は、ココであるのだな、と。
 裏切り者の影、抗体や白血球との“戦争”、さまざまなアクシデントなどストーリーの骨格と流れもしっかりしていて、最後までスリリングな空気を持続させるのも立派だ。

 SFサスペンスであることを重視しすぎて、さらには美術・特撮にカネと時間をかけすぎたせいで、人間ドラマは皆無、絵作りもややバリエーションに欠ける。また、確か現在では人間を超小型化することは物理的に不可能であることが立証されているはずだし、それを差っ引いても「船はあの後どうなったの?」など、科学的に強引で整合性の取れていないところも目につく。中盤には間延びも見られる。
 だが、当時の技術や知識レベルを考えれば、これで上々。同監督による傑作『ソイレント・グリーン』などを含む「SFこそが最上のエンターテインメント」という60~70年代のアメリカ映画の流れの中で、大きな地位を占める作品であることは間違いない。
 100分間をどのように見せ切るか、体内という特殊環境が舞台となっていることを生かしてどのようなハプニングを盛り込むか、という点でキッチリとした仕事を感じ取れる映画でもある。

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