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2007/08/14

トランスフォーマー

監督:マイケル・ベイ
出演:シア・ラブーフ/ミーガン・フォックス/ジョシュ・デュアメル/タイリース・ギブソン/レイチェル・テイラー/アンソニー・アンダーソン/ケヴィン・ダン/ジュリー・ホワイト/W・モーガン・シェパード/バーニー・マック/ジョン・タートゥーロ/ジョン・ヴォイト
声の出演:ピーター・カレン/ヒューゴ・ウィーヴィング/マーク・ライアン

30点満点中17点=監4/話2/出3/芸3/技5

【変形ロボットたちの侵略から地球を守るのは……!?】
 カタールの米軍駐屯地で、突如としてヘリコプターがロボットへと変形、コンピュータへのハッキングを試み、基地を全滅させて去る。さらにロボットは大統領専用機にも侵入し、ある高校生のデータを得る。その高校生サムが持つ祖父の形見と、彼が買った中古のカマロこそ、地球を変形ロボットたちの攻撃から守る唯一のカギ。サムとカマロ、クラスメイトのミカエラ、米軍や秘密組織セクター7などが絡む、逃走と迎撃のスペクタクルが始まる。
(2007年 アメリカ)

【心意気はあるけれど哲学はない】
 冒頭20分が、すげぇ。ラスト20分が、すげぇ。でも、その間をつなぐ約100分は眠っていてもOK、そんな映画。

 それにしても、いろんなものをなぞり、いろんなものを盛り込んだなぁ。
 いきなりのクライマックスから中盤の隠れんぼというのは『宇宙戦争』と同じ。『E.T.』っぽいところや『ブラックホークダウン』風味、『クリスティーン』に『グレムリン』まであったりして。『ザ・ロック』や『アルマゲドン』のセルフ・パロディも入ってる。
 もちろん、大仰なマーチに乗っかってスローモーションでマッチョが歩くという、いかにもマイケル・ベイなシーンも健在。

 単なるSFアクションにとどめないよう「女の子から好かれるためにクルマを買う」というベタな発端から始まる青い恋を入れ、少年の成長物語もまぶし、臨機応変に戦う兵士やカタブツの軍人といった対比を少々。クスっと笑える場面も用意する。
 カマロの汚れかた錆びかたも上々で、砂漠に教室に司令室に北極に郊外に町中とロケーションも豊富。ケガをしている犬と薬、乳歯が抜けたばかりの少女といったパーツは“機械ではない、生身の生きもの”の象徴だろうか。

 が、こうして散らされたリアリティ向上のためのアイテムとサービス精神の発露としてのイロイロは、逆効果というかムダというか、雑然感だけを生んでしまうものになってしまっている。
 たとえばミカエラの「クルマを分解できる」という設定なんか、もっとふくらませたはずなのに。せっかくMP3プレーヤーやゲーム機やVTRをサラリと画面に配しているんだから「ひょっとしたら、この機械もトランスフォームするかも……」というスリルを出せたはずなのに。
 SPにも倒せなかった敵を女子高生が一撃で退治するし、あれだけ目立つ機械生命体に誰も気づかないし。メガトロンの倒しかた=キューブの扱いも腑に落ちないし、全体として展開は強引だ。
 なぁんかゴチャゴチャして盛りだくさんだけれど、まとまりを欠き、各要素が面白さへと直結していない感じ。

 最大の傷は、単調さとクドさ。○○が必要だ→それを準備する、○○へ行こう→そこへ行く、○○が来るぞ→やって来る……といった具合に、いちいち前置きがあってから行動・アクションシーンへと移る。基本的に、その繰り返し。一本調子でリズムが悪い。展開の意外性もないんで、1時間で飽きちゃいましたよ。
 ま、夏休み公開の子ども向けってことで、整合性や論理性や伏線+解決のカタルシスや映画的な語りの楽しさは二の次にして、いろいろ詰め込みつつもわかりやすぅく、マンガちっくに作ったのかな(その割にきわどいセリフもあったけど)。

 見どころは、やはりアクション。特に冒頭のカタールでのパートとクライマックスの市街戦は、さすがのスピードと迫力、とんでもないクォリティのCG。今後はコレが「人間とCGとを同画面で動かす」絵の基準になっていくんだろう。
 また「何が起こっているのかギリギリわかる」くらいの細かなカット割りとブレまくる画面作りも、アクションの緊迫感を高めていく。
 ああ、このデキでモビルスーツとかスコープドッグとかバルキリーとかを動かして欲しいぞ。
 あと、意外にもマッチョに成長したラブーフ君と、最初はイヤでバカっぽい女だったミカエラのミーガン・フォックスが、時間が経つに連れてイイ女に見えてくるという撮りかたも良質だろう。

 まとめれば、確かに大画面で観るべき作品だけれど、DVDで観るくらいならいっそ観なくってもいい、という仕上がり。
 なんだかPART2も作られそうなラストだけれど、どうだかなぁ。楽しませようという心意気はあるが、そのためにはどうすればいいかという哲学がない、もうそんな映画には、して欲しくないところだ。

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