デス・トランス
監督:下村勇二
出演:坂口拓/須賀貴匡/剣太郎セガール/竹内ゆう紀/朝田帆香/藤田陽子/樋浦勉
30点満点中13点=監3/話1/出2/芸4/技3
【伝説の棺を巡って、男たちが森を往く】
それを開ければどんな望みでもかなう……。単なる噂に過ぎなかったが、ある寺院に厳重保管され、多くの僧侶によって守られている伝説の棺。ところが、たった1人の剣士によって僧兵たちは倒され、棺も奪われてしまう。旅から戻った若き僧侶は、棺の謎を解く「選ばれし者にだけ抜ける剣」を携えて、やはり棺を狙う謎の拳銃使いとともに剣士を追う。目指すは、西にある禁断の森。そこへ、すべての事情を知るらしい女も絡んで……。
(2005年 日本/アメリカ)
【ウリモノがウリモノになっていない】
アクション→説明→アクション→説明……がリピートされ、男のドーテイ喪失+女のばぁじん喪失に『エヴァンゲリオン』と『天使禁猟区』をトッピングしたお話が繰り広げられる。演じるのは、クっさいお芝居の面々(演技らしい演技を見せてたのって須賀貴匡と子役の朝田帆香だけだな)。
ま、ストーリー映画ではなく“アクションが主役”なので、そのへんは目をつぶるとしよう。けれど説明シーンまでぐるんぐるんとカメラは動いてデジタル臭もたっぷり、大仰&スタイリッシュに撮ろうと頑張りすぎている。おかげでアクションシーンとテンションや温度の差がなくなって、結果、意気込みばかりが先走る仕上がり。
それでもまだ、アクションに観るべきものがあれば救われるのだが、どうもねぇ……。
戦っている人がヘトヘトになったり、「これ、当たってるやろ」と思わせる一撃が時おり見られたりと、それなりにリアルで面白いところはある。だが全編を貫くプランニングには問題があるのではないか。
ガチンコっぽく見せようと思うなら、本物の格闘技を見慣れている僕らの目はかなり厳しいわけで、もっともっと痛みや重みや鋭さや硬さを突きつける動き+それが人体に与える影響までをもリアルに提示してくれないと不満が募るし、スローモーションは抑え目にすべきだったろう。逆に昨今ハヤリの「ありえねー」系に走るなら、笑っちゃうくらいの驚きと仰天のカメラワークが必要だ。
が、どっちつかず。まず主人公に殺意がないため、緊迫感が薄れてしまっているのが痛い。ハナっから当たらない方向に剣を振りまわしたりとか、殴られるのを待っていたりとか、もう見飽きちゃったワイアーとか、既存のアクションにもある“お約束の殺陣”から脱してもいない。おまけに最強のはずの女神との戦いはCGとカメラワークだけで誤魔化しちゃって「あれれ、そこをやりたかったんじゃないの?」とズッコケ。
当人たちが思っているほどスゴイものだとは感じられないのだ。『殺人の追憶』のほうが、よっぽど痛くて衝撃的だったなぁ。
それなりに感心できるのは、花谷秀文(『ニライカナイからの手紙』『8月のクリスマス』)による美術くらいか。
ウリモノがウリモノになっていない、空回り映画である。
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