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2007/09/09

カーズ

監督:ジョン・ラセター/ジョー・ランフト
声の出演:オーウェン・ウィルソン/ポール・ニューマン/ボニー・ハント/ラリー・ザ・ケーブル・ガイ/トニー・シャルーブ/マイケル・ワリス//ジョン・ラッツェンバーガー/マイケル・キートン

30点満点中18点=監3/話4/出3/芸4/技4

【若きレーシング・カーが、新しい自分に目覚める】
 身勝手で俺様主義のレーシング・カー、ライトニング・マックィーン。次のレースに勝てばピストンカップ初となる新人優勝を達成、大手スポンサーもついて優雅な生活を送れる……はずが決勝の地カリフォルニアへ向かう道で取り残されてしまう。彼がたどり着いたのは、かつてルート66の要所として栄え、バイパスが完成したいまではすっかりさびれたラジエーター・スプリングス。この田舎町で、彼の価値観を変える出会いが待っていた。
(2006年 アメリカ アニメ)

【ちゃんと映画しててスポーツしててクルマしているのだ】
 そろそろピクサー作品にも飽きるかな、と思っていたんだが、いやいや、これだけのクォリティのモノをコンスタントに送り出してくるってのは、たいしたもんだなぁ。

 俺様野郎が出会いを通じて新しい価値観を身につけるストーリーは、ベタといえばベタだろう。でも、そこに頭の悪さがない。
 メーターから「親友」といわれたとき、滝を背景に走るサリーの姿を見るとき、ドックへの憧れを新たにするとき……。各シーンから、それまで“勝つ”ことしか頭になかったマックィーンの胸に、“触れ合う”ことの優しさや“走る”ことの楽しさや“認める”ことの大切さを感じ取っている心の動きがグンと迫ってくる。
 それをグダグダとセリフで説明するのではなく、展開や演技(作画)やカメラワークで「観てわかる」カット/シーンとして仕上げてあるのがいい。要するに、ちゃんと映画しているんだな。

 またレースをスポーツとして、登場自動車たちをクルマとして扱っているのもいい。ピット作業や中継画面、女性トイレ前の行列など「あるある」的なスパイス、細かな挙動、各カーのボディの質感、オイルのよだれ、ひっくり返った後で「ポコポコ」と聴こえるガソリンの音……。
 これは「レーシング・カーを主人公としたクルマたちの話」である、ということを最初から最後までまっとうしている。そのスタンスにブレがないから安心して観ていられるのだ。

 ポール・ニューマンを引っ張り出したことに加え、あの人とかこの人とか豪華なゲストも登場して、モーター・スポーツへのリスペクトも示してみせる。特にね、サーキットにドックが帰ってきたときのスタンドの描写には、アメリカ人がどれくらいスポーツを愛しているか、スポーツの中に残る伝説にどれくらい敬意を払っているかを、ズドンと思い知らされた。

 もちろん、すみずみまでの描きこみ、抜群のスピード感、色合いといった作画・CG面でのクォリティ、あるいはリファレンスに使えそうな迫力の音響など、技術的・芸術的な下支えがあってこそ、楽しいストーリーや一貫したスタンス、リスペクトの提示などが実現できている、ということもよくわかる。

 最後には、これまでピクサーを支えてくれたファンへの感謝を示すことも忘れない。
 この楽しいファンサービスだけでなく映画そのものからも、ピクサーのアニメが極上のエンターテインメントとしてしっかりと映画界に地位を確立していることを実感できる、そんな作品である。

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