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2007/09/30

キング・アーサー

監督:アントワン・フークア
出演:クライヴ・オーウェン/ヨアン・グリフィズ/キーラ・ナイトレイ/レイ・ウィンストン/マッツ・ミケルセン/ジョエル・エドガートン/ヒュー・ダンシー/レイ・スティーヴンソン/スティーヴン・ディレイン/ステラン・スカルスガルド/ティル・シュヴァイガー/イヴァノ・マレスコッティ

30点満点中16点=監3/話2/出3/芸4/技4

【騎士たちは自由意志で、その戦いに臨む】
 ローマ帝国の力が衰えを見せ始めた紀元500年頃。マーリン率いるウィード(現地人)の軍勢に対抗してブリテンの城壁を守る司令官アーサー、サルマートから徴兵されたランスロットら円卓の騎士たちは、ゲルマヌス司教の到着を待ちわびていた。司教は彼らを自由にする解任通知書を携えていたが、最後の任務として「ゆくゆくは大司教になる少年」の救出を命じる。その地には、冷酷なことで知られるサクソン人の軍勢が迫りつつあった。
(2004年 アメリカ/アイルランド/イギリス)

【わかりやすさはあるが、物足りない】
 アーサー王は実在せず、さまざまな伝説・史実がゴッタになって理想の英雄として創り上げられた人物らしい。本作はアーサーのモデルとなった数々の人物・出来事のうち、サクソン人との戦いで指揮を執ったローマ人指揮官アーサーをモチーフとしているとのこと。

 見どころはバトルシーンか。驚くような真新しさはないものの、氷上での戦いにせよ城壁内にせよアーサーの戦略は簡潔明瞭、スピーディで軽快かつ重厚、迫力もある。サクソン人が村を軽々と焼き払い、それをたった5秒のシーンのために用意した思い切りのよさも評価したい。
 各場面の絵の美しさも上等だ。朝もや、雪、泥、炎といった状況の質感をしっかりと捉え、その中に収まる騎士たちの姿も実にかっこいい。スワヴォミール・イジャックの撮影は『ガタカ』でも独特の品格を持つ“質感”を漂わせたが、今回もフォーカスの使いかたなどに痺れるところがあり、その場の空気をシャープに切り取る腕には素晴らしいものがある、と感じさせた。

 不満は、ストーリーの面。
 取り上げられるのは、サクソン人との大決戦をクライマックスとする前後1週間ほどの出来事。そこに絞ったことでストーリーがスッキリとし、観やすい(わかりやすい)ものにまとまったことは事実だ。
 ただしその代償として、なぜ騎士たちがそこまでアーサーに信頼を寄せるのかが曖昧となり、彼らの行動に説得力を欠く因となっている。確かにアーサーが自由を重んじ、各人の意志を尊び、カリスマ的な指揮力を発揮する人物であることは披露される。が、もう少し突っ込んで人間的な魅力を描いてもよかったはずだ。サルマートの騎士たちが戦いに明け暮れた15年間、その重みを感じさせるエピソードも薄い。
 全体として、6~8時間くらいあるお話の最後の2時間を観た、という印象。このクォリティを維持したまま3部作にするとか、NHK大河ドラマでやっちゃうとか、それくらいの規模なら傑作に成り得たのだが。

 また、わかりやすい話の割にワクワクするような展開が少なく、映画的な面白さが戦闘シーン以外に見られなかったのも残念。つまらなくはないんだけれど、物足りなさの残る作品だった。

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