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2007/09/20

歓びを歌にのせて

監督:ケイ・ポラック
出演:ミカエル・ニュクビスト/フリーダ・ハルグレン/レナート・ヤーケル/ヘレン・ヒョホルム/ペール・モーベリ/ニコラス・ファルク/インゲラ・オールソン/イルヴァ・ルーフ/アンドレ・ショーベリ

30点満点中17点=監3/話3/出4/芸4/技3

【田舎町に響く、心を開く歌声】
 多忙を極める世界的名指揮者ダニエル・ダレウス。だが心臓を病み血を吐きステージ上で倒れ、一切の予定をキャンセルして休養生活に入る。彼が暮らし始めたのは、生まれ故郷の小さな村。いい思い出などないこの村で、古い小学校を買い取り、教会の聖歌隊では指揮者を務めることになり、彼の表情にも微笑みが戻り始める。しかし、愚かな恋を繰り返すレナ、夫の暴力に晒されるガブリエラなど、幸せそうな村の人々にも多くの問題があった。
(2004年 スウェーデン)

【完成度は高くないが、主張は伝わる】
 主人公ダニエルだけでなく、レナ、ガブリエラと暴力夫のコニー、スティッグ牧師と妻インゲ、シヴ、トーレなど特徴ある人的ピースを散らしすぎたせいで、奥行きを欠き、少々突っ込み不足の物語になった感は否めない。
 また映画の作りとしても、田舎町の涼しげな空気感の再現に成功していたり教会や集会所の臨場感を出せていたり、音楽を利用したシーンとシーンのスムーズな移行、各人の表情をしっかりと捉えるなど丁寧さは見られるものの、どちらかといえば当たり前の仕上がり、やや散漫なところも残る。

 つまり完成度としてはそれほど高いわけではないのだが、それでも感動できるのは、ちゃんと“音楽の意味と機能”に踏み込んでいるからだろう。
 なぜ音楽はそこにあるのか? 人がそこに生きているからだ。人の心にあるものこそが喉と口から実際に声となって放たれるのだ。
 音楽は何をもたらすのか? それは一体感であり、開放感であり、生きかたの主張や再確認であり、「なぜオーストリアに行っちゃいけないの?(わたしは行きたい)」という人生の歓びである。

 ダニエルにとって音楽は、さまざまな意味で実在証明として機能していたのだろう。君(僕)は君(僕)のままでいい。そういうことを自分自身に伝えるために、理想とする音楽を追い求めていたのだ。

 そうしたことをしっかりと、いい音楽に乗せて届けてくれる清々しさがあるために、涙を呼ぶのだろう。
 誰もが大なり小なり問題を抱えながら生きている。それを音楽で誤魔化すのではなく、「人間なのだから、問題があっていいのだ」と認め、心の中にあるいろいろを解き放つ。そうして真の音楽を奏でることこそが、人にとって慰めとなり、人と人との相互理解へと至るのだ。
 ドラマというよりも、そうした“音楽の本質”を教えるために存在するような映画である。

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