アフリカの女王
監督:ジョン・ヒューストン
出演:ハンフリー・ボガート/キャサリン・ヘプバーン/ロバート・モーレイ/ピーター・ブル
30点満点中16点=監4/話3/出4/芸3/技2
【アフリカの川に、ふたりと女王とが往く】
宣教師である兄サミュエルとともに、アフリカの僻地で布教活動にあたるローズ。だがヨーロッパで大戦が勃発、戦火は彼らの住む村にも訪れ、サミュエルは命を落とす。ローズを村から連れ出したのは、小型ボート「アフリカの女王」号を駆って郵便配達から機械修理までこなす便利屋チャーリー。彼に対しローズは、川を下って湖へと行き、ドイツ軍の戦艦を攻撃しようと提案する。ふたりの往く手には砦や急流など数々の苦難が待ち受けていた。
(1951年 イギリス/アメリカ)
【意外にも、軽い気持ちで観られる娯楽作】
思ったよりも人間くさいチャーリーに驚いた。人間くさいというより「マッチョじゃない」「乱暴モノじゃない」か。
チャーリーとローズとの関係は「がさつな船長と敬虔なクリスチャン」と紹介されることが多いはずだが、どうしてどうして、坂道を降りるローズを振り返って案じたり、手を添えたり、励ましたり、常に気遣いを見せる。すぐに浮かれるし、すぐに弱音を吐く。どっちかというと(いや明らかに)チャーリーがローズに振り回されている。雨の中に放り出されたときの情けない顔なんて、なかなかにラブリー。ハンフリー・ボガートの名演もあるが、人間くさくて魅力的な人物じゃないか。
映画の作りとしては、古めかしさは否めない。チープな合成とか、スタジオっぽさとか、画面の変化の乏しさとか。ただその中に、村を焼き焼き払われた後のサミュエルの行動のリアリティ、ボイラーや水面を上手に使った水浴びのシーン、ボートの動きや位置をダイナミックに見せるカメラワークなど、ドキっとさせられる部分もふんだんに詰まっている。
ストーリーはやや強引で、ローズの心情変化(兄を失った哀しみから立ち直ってチャーリーに恋心を抱くまで)をもうちょっと丁寧に描いてもよかったと思うが、波乱万丈で退屈させない展開、スパッと次のシークェンスへと移るテンポのよさもあって楽しさがある。
クセ者の印象のあるジョン・ヒューストンにしては明快で、軽い気持ちで観ることのできる娯楽作。スター俳優ふたりのアンサンブル、サスペンス&アクション&ロマンス、さらには当時まだ情報が少なかったであろうアフリカの自然を観客に味わわせる、という3つの要求を、それなり以上のレベルでクリアした映画といえるだろう。
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