ルパン
監督:ジャン=ポール・サロメ
出演:ロマン・デュリス/クリスティン・スコット・トーマス/エヴァ・グリーン/パスカル・グレゴリー/ロビン・レヌッチ/パトリック・トーミー/マリー・ブネル/ニッキー・ノード
30点満点中16点=監3/話3/出3/芸4/技3
【若き盗賊は、誰に愛を捧げるのか】
叔父のスービーズ公爵家から追い出されたアルセーヌ・ルパン少年。泥棒として逃走中だった父の死体を見た彼は、年を経て、父と同じく金持ちだけを狙う怪盗へと成長していた。妖艶な美女ジョセフィーヌ=カリオストロ伯爵夫人と手を組み、スービーズら反体制派が探している財宝の横取りを企むルパン。そこに、父の死の真相を知るボーマニャン、ルパンを愛とともに止めようとするスービーズの娘クラリスらの想いが重なっていく。
(2004年 フランス/イタリア/スペイン/イギリス)
【あんまりカッコよくないルパン】
子どもの頃、ポプラ社の本で読み漁ったルパンはもっとカッコよかった。颯爽として神出鬼没で、義にあふれる盗賊。
が、『カリオストロ伯爵夫人』や『奇巌城』や『813』などをミックスして若き日の姿を描く本作のルパンは、ちっともカッコよろしくない。まぁ原作のルパンにもけっこう失敗は多いんだけれど、なんかこうピシっと決まっていないんだよね。
女性に対してどういう感情を抱いているのか、ジョセフィーヌやクラリスは彼にとってどういう存在なのか、なぜ泥棒という仕事を続けなければならないのか。「お前は何を目指しているの?」と問い詰めたいくらい立ち位置が曖昧。
それも彼の若さゆえなんだろうけれど、都合のいいタイミングで都合よく人が現れるストーリー、身勝手なリズムで次のカット/シーンへと移行する編集、ラブシーンとアクションとが交互に訪れる一本調子の展開などともあいまって、どうも感情移入できないまま時間が進む。ジョセフィーヌもクラリス(このコ、尻軽だよなぁ)もボーマニャンも、それぞれの関係も練り切れていない感じがある。
鳴り止まないBGMは気ぜわしいし、コメディとシリアスの間で宙ぶらりんな空気も居心地が悪い。
それでも、いちど出したモノや人を無駄なく後の場面で生かすなど構成の面白さはそれなりにあり、スピーディなアクション、街並みや衣装の美しさ、ハリウッド製アクションではお目にかかれないセリフまわし……と、見るべき点も多くて退屈はしない。
スタイリッシュにまとめようとして、まあまあ成功はしたけれど、全体としては説得力と訴求力に欠けるものになっちゃった、という作品だ。
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