サウンド・オブ・ミュージック
監督:ロバート・ワイズ
出演:ジュリー・アンドリュース/クリストファー・プラマー/チャーミアン・カー/ニコラス・ハモンド/ヘザー・メンツィーズ/デュエン・チェイス/アンジェラ・カートライト/デビー・ターナー/キム・カラス/エレノア・パーカー/リチャード・ヘイドン/ペギー・ウッド/アンナ・リー/ダニエル・トゥルヒット
30点満点中20点=監4/話4/出4/芸4/技4
【奔放な修道女と、厳格な軍人一家】
1930年代のオーストリア、ザルツブルグ。奔放で規律違反ばかりの修道女見習いマリアは、院長のマザー・アッベスに指示されて、フォン・トラップ大佐の家で家庭教師を務めることになる。待ち受けていたのはルールに厳しい大佐とイタズラ好きな7人の子どもたち。マリアは持ち前の明るさと行動力でトラップ家に絶えていた歌声を蘇らせるが、大佐の再婚話、そして大戦の影が、一家とマリアの運命を揺さぶるのだった。
(1965年 アメリカ)
【ミュージカルとしても映画としても極上】
切り立った崖と雪、それに続く緑と青とで、観る者を一瞬にして異世界へと誘う。さらにマリアの歌声『サウンド・オブ・ミュージック』へと至る流れは、映画のオープニングとして最高クラスの仕上がり。もうこれだけで涙が出てきてしまうほどだ。
以降も『もうすぐ17才』『My Favorite Things』『ド・レ・ミの歌』などの各ナンバーがワクワクさせてくれる。ロジャース&ハマースタインの偉大さはもちろんだが、単に曲の良さだけでなく、計算されたカメラワークと的確な編集のおかげで、見て楽しいシークエンスとして仕上げられている。
奔放さと気品とを併せ持つジュリー・アンドリュースの魅力、役柄にベストマッチしているクリストファー・プラマーが本作および各歌曲を一段高いところへ押し上げているのはいうまでもないが、美しい長女リーゼル役のチャーミアン・カーというタレントに恵まれたことも大きい。
歌う場面だけではない。カーテンで作られた外出着、子どもたちが男爵夫人に抱いている感情、毒々しい鉤十字がいかにザルツブルグの街に似合わないか、マックスおじさんの胸から取り出される音楽祭のパンフレット……など「多くを語らず、テンポと小道具を生かして、見せてわからせる、ドキっとさせる、上手いと感じさせる」という作りが一貫していて、“映画”としての文法の素晴らしさを楽しめるのが嬉しい。
また『エーデルワイス』や『さようなら、ごきげんよう』によるクライマックスなど、曲のリプライズとストーリーとの絡み合いも良く、マリアの成長と大佐の結婚話、戦時下の情勢、リーゼルの恋など物語には適度に波とふくらみがあって、ユーモアに富んだセリフや展開も楽しい。約3時間の長尺を退屈させずに見せるシナリオは、なかなかに練られている。
特に感心したのが、大佐が「いつマリアに愛情を抱いたか」を告白するところ。これ以上ない説得力を持つ“恋に落ちた瞬間”ではないだろうか。
もう1つ、ドアや門を開けて中に入るor外に出て行く、という場面が頻出するのもポイントだろう。自らの力で運命を開いていく。そんなメッセージが込められているように感じた。
中盤以降ちょっと重くなってしまった、7人の子どもたちのキャラクターの描き分けにもこだわって欲しかった、執事や家政婦にも活躍の場を与えて欲しかった、トラップ家のホールがちょっとセットくさいなど、細かな不満もなくはないが、ミュージカルとしても映画としても極上の作品であることは確か。誰もが最初から最後までスキなく楽しめる1本だ。
そして「観ると、行ってみたい場所が1つ増える」作品でもある。
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