アンビリーバブル
監督:トマス・ヴィンターベア
出演:ホアキン・フェニックス/クレア・デーンズ/ダグラス・ヘンシャール/アラン・アームストロング/マーク・ストロング/マーゴ・マーティンデール/ジェフリー・ハッチングス/ショーン・ペン
30点満点中14点=監2/話1/出3/芸4/技4
【別れるはずの妻、その周囲に起こっていることとは】
近未来、心臓発作の多発や真夏に降る雪、ウガンダでの重力異変など不可思議な事象が相次ぐ世界。フィギュアスケートのスターである妻エレナと離婚するため、ポーランド文学者のジョンは久々にNYへと戻ってきた。ぎこちなく挨拶を交わすジョンとエレナ。書類にサインをもらったらすぐにカナダへと帰るつもりのジョンだったが、エレナの関係者は何かに怯え、彼女の兄マイケルの様子もおかしい。滞在を伸ばすことにしたジョンだったが……。
(2003年 アメリカ)
【とりあえず、ストーリーは無視するべき】
ああ、このヴィンターベアってドグマの人だったのか。まぁ本作は反ドグマとして作ったということだが、ドグマよりも酷く、結局のところ「映画の何たるかをわかっていない人間の自己満足」になっている。
ここのところ「ストーリーなんてどうだっていいや」という気持ちが強くなっているのだけれど、そんな立場から見ても、これはマズい。
ん~、どういえばいいのかなぁ。桑田圭祐とかスピッツあたりに、ただ思いついたまま言葉を並べたという感じの曲があるでしょ。でも、全体を俯瞰してみるとひとつの世界が浮かび上がってくる、みたいな。あれを真似ようとして、でもセンスがないもんだからただの羅列になっちゃってる、というイメージ。あるいはオートマティック・ライティングで書かれた詩。
いや、一応ストーリー展開はあるし、サスペンスといえばサスペンス、ラブストーリーといえばラブストーリーなのだが……。ああそうだ、「こんな夢を見ました。それをそのまんま映像化しました」に近い。事件や人物の行動にリアリティはゼロだし、どこへ向かっているのか、何を伝えたいのかも不明なパッチワーク的お話。ショーン・ペン、出てる意味ないし(とはいえショーン・ペン以外だったら、ますます「何やねん、お前」になってしまう役どころだけれど)。
それでも無理やり読解を試みれば、これは監督がいうようなジョンとエレナのパーソナルな物語ではなく、もちろんショービジネス界の内幕を皮肉ったものでもSFサスペンスでもない、あと1~2年で滅亡することに人類がまだ気づいていない地球世界に忍び寄り始めた狂気と戸惑いを描いた作品、といったところだろうか。にしちゃあ舌っ足らずだが。
そんなわけでストーリー面に対する評価は低くなるが、重苦しさ漂う音楽や陰影に富んだ映像、抜群のタイミングを見せる編集など技術面の仕事はなかなかに上質。クレア・デーンズも『ターミネーター3』より可愛いし。
トータルすると、こんなこともやりたい、あんなことも僕ならできる、と頭がふくらんだ自主製作風の世界観を、すごぉく豪華な技術で作った、という作品。アリかナシかでいえば、もちろんナシだな。
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