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2007/11/18

ディック&ジェーン 復讐は最高!

監督:ディーン・パリソット
出演:ジム・キャリー/ティア・レオーニ/リチャード・ジェンキンス/アーロン・マイケル・ドロジン/グロリア・ガラユア/アレック・ボールドウィン

30点満点中17点=監3/話4/出4/芸3/技3

【会社が倒産! このまま路頭に迷う?】
 IT関連の大企業に勤めるディック・ハーパーは、仕事は順調、妻ジェーンと息子ビリーに囲まれて家庭も円満。さらに昇進を告げられて幸福の絶頂を味わったのも束の間、会社が倒産してしまう。全財産を自社株に投じていたため一文無しになったハーパー家。経営の責任者マカリスター社長が一銭も損をしていないことに腹立ちを覚えながらも、ディックとジェーンは「生活のためには強盗もやむなし」と思い立つのだったが……。
(2005年 アメリカ)

【ジム・キャリー版『クレヨンしんちゃん』?】
 このオープニングは、けっこう好きだ。シンプルで、わかりやすくて、いかにも「コメディの幕開けです」と告げる軽妙さに満ちている。
 以後もテンポは軽快で、まぁそのぶん、会社の倒産をジェーンがあっさり受け入れたり簡単に強盗へ走ったりと駆け足の雰囲気は否めないけれど、サクサク進んでなかなかに楽しい。

 秀逸なのは、パーツの散らしかた。ハーパー家のハウスキーパーがメキシカンである意味、彼女とビリーとが仲良しであるという伏線、吠える犬のしつけ器具、イヤミな面接担当官、同僚や上層部など、登場人物や小さな出来事を無駄なく整理してストーリーの中に配置してある。
 そのキッチリ感こそが軽快さを生んでいるわけだ。序盤に比べると中盤はやや説明過多、かと思えばクライマックスは舌足らずなんだけれど、パーツの配置が良質なもんだから「ああ、そーいうことね」「このための伏線だったのか、わははは」と、ひとつひとつを安心して笑えるのだ。

 主演ふたりもそれぞれ持ち味を発揮。ジム・キャリーのオーバーアクションにはますます磨きがかかってきた感があり、パペットのような“ちょっとしたスゴイ芸”の見せかたも上手い。ティア・レオーニは相変わらず別嬪さんで、眉を下げ気味に顰める「どうしよう」顔が素晴らしく似合う。

 で、エンロンの元社員なんかをアドバイザーに迎えて「アメリカ大企業の実態」を風刺しているわけだけれど、たぶんここで描かれていることって氷山の一角なんだろうな、と思う。ホントはもっともっと、ドロドロで理不尽でやり切れない事柄が“大企業の倒産”や“不景気”の周囲にはあふれているはずだ。
 ま、それをドロドロで理不尽でやり切れないまんま見せるのは他の人に任せておいて、ここではそんな苦境の中で進むべき“バカ道”を示してクソ世の中に光を照らすわけだ。

 幸せだけれどイケてない夫婦がオンボログルマを駆ってとんでもなく無茶なことをしでかす、でも最後には大団円っていう構図、どこかで観たと思ったら、これって春日部の野原家だ。ひろしとみさえだ。
 家族の幸せのためにムチャクチャをする。でも実は、そうした行動そのものが幸せでもある。
 クレしんが一貫して描いていることをジム・キャリーがやってしまったという怪作である。

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