ファイヤーウォール
監督:リチャード・ロンクレイン
出演:ハリソン・フォード/ポール・ベタニー/ヴァージニア・マドセン/メアリー・リン・ライスカブ/ロバート・パトリック/ロバート・フォスター/カーリー・シュローダー/ジミー・ベネット/アラン・アーキン
30点満点中15点=監3/話3/出3/芸3/技3
【家族を守るため、男は自ら創り上げた要塞に挑む】
地方銀行の役員ジャック・スタンフィールド。妻のベス、娘のサラ、息子のアンディとともに睦まじく暮らしていた彼だったが、ある日、家族が何者かに拉致される。犯人グループの首領ビル・コックスの要求は金。ジャックが務める銀行の大口預金者口座から、ビルの口座へ計1億ドルを送金せよというのだ。セキュリティ担当者のジャックなら可能なはず。が、折しも合併作業の只中にあった銀行では、システムの改変がなされ始めていた。
(2006年 アメリカ)
【中盤で息切れ】
プロテニスのツアーを舞台にしたコメディ『ウインブルドン』ではまずまず以上の才覚を見せたロンクレイン監督だが、こちらは面白みに欠ける。
ラジコン・カーやペットの犬、ナッツ・アレルギーなど撒き散らした伏線をきっちりと拾い上げていく手堅さは感じられる。余計なことを差し挟まず、かといって必要なことは省略せずにストーリーをポンポンと進めていくスピード感もある。決して暴力的ではない犯人グループがジャック一家を“がっちりと包囲している”という雰囲気もよく出ている。
ただ、あまりに軽くお話を展開させすぎだろう。
たとえば「ここからならネットワークにアクセスできる」「これがあれば口座番号を読み取れる」といった事態の打開策が、“取ってつけた感”の強いものというか、「登場人物がそう説明するので、とりあえず観客は『ふぅ~ん』と納得するしかない」ものとなっている。何も超専門的にしろとはいわないが、少しは「ほぉ、銀行のセキュリティってこんなふうになっているのか」と感心させたり、「うおっ、そういう手があったか」と唸らせる部分もあってよかったはずだ。
それに、簡単に上司のいうことを信じてしまう部下とか、犯人グループの中にいる「乱暴なことを嫌う男」が十分に生かされていなかったりとか、キャラクターの設定も練り切れていない。
このあたりに力を入れていれば、リアリティや深みも増しただろうに。つまり、全体にわたってテキトーな作りなのだ。
そして、その軽さ・薄さによる弊害が中盤以降で一気に表出する。やるべきことやアイディアを早めに出し尽くしてしまったため、後はドンパチやって大団円、そんな頭の悪い結末へと向かっていくのだ。
結果、意外性もハラハラ感もカタルシスもない作品へと収束。
まぁ軽さのおかげで観やすいものとはなっているものの「こんな中途半端なものを作るなよ。ハリソン・フォードが能力のある男を演って、事件に巻き込まれて、一所懸命にそこから抜け出すというフォーマットは『逃亡者』だけで十分だろう」という感想を抱かせるデキである。
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