11:14
監督:グレッグ・マルクス
出演:ヘンリー・トーマス/ブレイク・ヘロン/バーバラ・ハーシー/クラーク・グレッグ/ヒラリー・スワンク/ショーン・ハトシー/スターク・サンズ/コリン・ハンクス/ベン・フォスター/パトリック・スウェイジ/レイチェル・リー・クック
30点満点中18点=監4/話4/出4/芸3/技3
【連鎖するドタバタ・トラブル。その事故の真相は?】
夜道で人を轢いた無免許&酒気帯びドライバーのジャックは、なんとか誤魔化そうと警官相手に懸命だ。ティム、マーク、エディの悪童3人組もバンで女性をはねて逃げるが、事故現場にとんでもないものを落としてしまう。いっぽう娘のシェリルが元彼を殺したと思い込んだフランクは、隠蔽工作に苦心する。恋人の堕胎費用が必要なダフィは、バイト仲間のバジーとともに偽装強盗を企てる。バカな男と女たちの、喧騒の夜、午後11時14分。
(2003年 アメリカ/カナダ)
【期待を裏切って笑わせる、意外な拾い物の“おバカ”映画】
11時14分に起こったある交通事故の真相を、4つのエピソードをクロスオーバーさせて描く作品。DVDのパッケージや予告編は完全にサスペンス志向、あるいは“人間の業”みたいなものを感じさせて、たとえば『テッセラクト』、デキがよければ『アモーレス・ペロス』や『クラッシュ』あたりの雰囲気を想像させたのだが……。
軽快なオープニング・クレジット(結構好き)に続き、本編に入っても、なぁんか軽い。映像の質感、画面の構成、編集、すべてがテレビドラマっぽい作り。そして、笑える。
あれ? 笑っていいんだよね。うん、笑わせたいんだよ、やっぱ。だって登場人物たち、交通事故っていう緊迫状況下であることを割り引いても、テンパりすぎだし愚かだし。だいたい、落とした○○○を拾いに事故現場へ戻るってなんだよ(笑)
つまり、時制をクロスさせて「実はあの出来事の裏には、こういうことがありました」と示し、「あ、なるほどそういうことだったのか」と納得させる作りではあるが、前記3作品よりどっちかっていうと『運命じゃない人』とか『サマータイムマシン・ブルース』に近いのだ。
要するに、底辺に流れているのは“おバカ”。
そのバカさと軽さが、妙に心地よい。グロい死体も出てくるのに、リラックスして観ていられる。
キャストたち(むやみに豪華な顔ぶれだな)も、楽しみながら演じている感じ。いや、単なる軽佻なコメディ演技ではなくて、いい脚本に巡り会えた歓びを素直に、それぞれの役柄に込めて動き、喋り、おバカたちのジタバタを体現している。
そう、いい脚本。笑わせつつも1つ1つの出来事を解きほぐしていき、説明しすぎることもなく、かといって不足しているものもなく、おバカたちのおバカぶりもリアルで、最後には収めるところへストンと収めてみせる。
演出・撮りかたも、確かにテレビドラマっぽくはあるけれど、ムダに映像に凝ったり乱暴をしたりしないで、手堅くまとめて、脚本と出演陣のよさを引き出している。
監督・脚本のグレッグ・マルクスの、実質上のデビュー作。撮ったときにはまだ26~27歳だったらしいが、今後きっと“出てくる”人(たぶん脚本で)だろう。
ビデオスルーとは信じがたい佳作。逆に、いかにもビデオ向きというか、「あんまり期待しないで観たけれど、結構いいじゃん。こんなに面白いのに日本では劇場未公開、作品としては無名なんてもったいない」と、拾い物に出会えた喜びを味わえる仕上がりといえる。
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