ウルトラヴァイオレット
監督:カート・ウィマー
出演:ミラ・ジョヴォヴィッチ/キャメロン・ブライト/ニック・チンランド/セバスチャン・アンドリュー/ウィリアム・フィクトナー
30点満点中16点=監4/話1/出4/芸4/技3
【人類VS超人類、その戦いの鍵を握る者】
軍が偶然にも開発したウィルスにより、人類が、特殊能力を持つファージと人間とに分かたれた世界。ファージ撲滅の先導者であるダクサス卿が最終兵器を開発、運搬役としてXPD154と名乗る女性が研究所に参じる。だがその正体はファージの中でも指折りの殺し屋として恐れられるヴァイオレット。最終兵器が抗体を仕込まれた人間の子ども“シックス”だと知った彼女は、人間とファージの双方から追われるこの子を守るために立ち上がる。
(2006年 アメリカ)
【まずアクションとグラフィックイメージありき】
ブっ飛んだというか、無理やりなお話。
特殊な前提・設定のあるSFアクションという点で、この監督の出世作である『リベリオン』やミラ・ジョヴォヴィッチ主演の『バイオハザード』シリーズ、あるいは『アイ,ロボット』とか『アイランド』とか、『アンダーワールド』とリーズ、『イーオン・フラックス』(やたらと観ているな、この手の映画)などと通じるのだが、その前提・設定に説得力を持たせたり面白く展開させたりといった工夫が、まったくといっていいほどない。
セリフはほとんど状況説明のために用意されているし。TVシリーズの番外編か低予算OVAか、というくらいのデキ。
で、その説明セリフの間に派手なアクションが挟まれる、という作りになっているのだが、この部分はまずまず上質だろう。
ベースとなる映像世界は、日本製アニメーションにアメコミ、ミュージック・クリップからFPSにいたるまで、あらゆるエッセンスを盛り込んで作られたクールなもの。グラフィカルに、めくるめく色彩感覚(防護服が赤や青だったりするんだもん)で各シーンは展開する。
デジタルで作られた質感、クルマの挙動までアニメ的。
その幻影の中で躍動するのがミラ・ジョヴォヴィッチ。この人間離れしたプロポーションが、現実離れした世界に馴染む。完全にアクションをモノにしているとはいわないし編集に助けられている部分も多いけれど、十分にシャープで情熱的。ケイト・ベッキンセイルだと、こうはいかない。
彼女を中心に、アップやら真上からの俯瞰やら、多彩な画角で短いカットを畳み掛け、スピーディかつユニーク、『リベリオン』で示したガンカタの世界を踏襲した迫力ある剣戟・格闘・銃撃が作られる。
兵器や携帯電話など各種ガジェットのディテールも遊び心にあふれ、創られた雰囲気のスタイリッシュさはなかなかのものだ。
つまりは、リアリティよりも様式と見た目を重視した仕上がり。ああなるほど、こういう方向性で映画を作るなら、説得力とか工夫とかはいらないと思ったわけだな。
たとえば『THX-1138』が「まず描きたいこと、伝えたいことを作り、それに合わせて美術デザインやロケーションなどを整えて世界を構築していった」作品であるのに対し、こちらは「まず見せたいアクションやグラフィック・イメージがあり、それに合わせて設定やストーリーを考えた」ものになっているのだ。
要するに、ビュンビュン戦って、ハイおしまい、な映画である。
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