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2008/01/13

アンフィニッシュ・ライフ

監督:ラッセ・ハルストレム
出演:ロバート・レッドフォード/ジェニファー・ロペス/ジョシュ・ルーカス/カムリン・マンハイム/ダミアン・ルイス/ベッカ・ガードナー/モーガン・フリーマン

30点満点中21点=監4/話5/出4/芸4/技4

【傷を負った人々の、再生への暮らし】
 恋人からの度重なる暴力から逃れるため、娘のグリフを連れて家を飛び出したジーン。ふたりは、ジーンの亡き夫グリフィンの父であるアイナーと、その友人で熊に襲われ重傷を負ったミッチが暮らすワイオミングの牧場を訪れる。ジーンのせいで息子が死んだからと、彼女を許せず不機嫌なままでいるアイナー、気まずさを抱える義理の娘ジーン、初めて祖父の存在を知った少女グリフ、そして寝たきりの男。4人の共同生活が始まる。
(2005年 ドイツ/アメリカ)

★ややネタバレを含みます★

【理屈を超え、感情で考える生と死】
 いまもって“死”というものを、逝くものにとっての死も、のこされたものにとっての死も、理解できないでいる。せいぜい頑張って『ワンダフルライフ』の感想くらいのことを考えるのが精一杯だ。それはすなわち“生”を理解していない、ということでもある。
 『ワンダフルライフ』は“死”を前面に出して“生”を考えさせる映画だったが、こちらは「死ぬまで続く生」をテーマとした作品、といったところだろうか。

 どうしてこんなにも、じわりじわりと心に染み込んでくるのだろう。こういう「なんでもない人たちが他者との関わりの中で自分を見つめ直し、立ち位置を再確認してふたたび歩き出す」という物語を撮らせたら、この監督の右に出るものはいない。

 救われない人たちと、そんなことは委細構わずあり続ける大自然、という対比をしっかりと捉えたカメラ(撮影は『サイダーハウス・ルール』『シッピング・ニュース』でもハルストレム監督とコンビを組んだオリヴァー・ステイプルトン)、その風景に馴染むギターを中心とした音楽、アイナーの家周辺のたたずまいをはじめとする美術など、各パーツが上質で、それらをしっかり結びつける監督のコーディネート能力も高いわけだけれど、もう技法がどうとかセンスがどうとかじゃなく、ただ“いい”のだ。

 たとえば、死んだ父と自分の笑顔は似ているだろうかと口元をキュっと上げるグリフの様子とか、柱に手をついて身体を支えているアイナーがその手を柱から離さないままクレインに挨拶する姿、じっと寝ているミッチといった、ホントになにげない仕草・表情をサラっと見せられて、それらにどうしようもなく「ああ、いいなぁ」と思ってしまう。
 この人の作り出すあたたかな空気感が、自分の中にある何かとシンクロしてしまう、というしかない。

 加えて今回は、脚本(マーク・スプラッグ/ヴァージニア・コラス・スプラッグ)の良さもある。
 ジーンは自分が起こした事故の様子を警察から聞かされて、頭の中で何度も何度もそれがフラッシュバックされて、「6回転する自分とグリフィン」という映像に長く苦しめられてきたのだ。グリフは虐待を受けまいとして従順さと自分に求められていることを読み取る力を身につけたのだ。
 そんなものわかるはずもないのに「トラックのことわかるか?」とグリフに尋ねるアイナーの戸惑い。ミッチの悪態から浮かび上がる、アイナーとミッチとの絆。「まず死ななきゃな」という言葉の裏にある「簡単に死なせるもんか」という想い。
 それぞれが抱える痛みが、くどさをともなわず、けれど鋭角に描かれる。台詞ひとつひとつが、ちゃんと背景をともなって輝いている。

 もちろん演技陣もいい。モーガン・フリーマンの瞳にうっすらと浮かぶ涙とか、疲れたジェニファー・ロペスとか、カウンターに肘をつくカムリン・マンハイムとか、ベッカ・ガードナーちゃんの視線とか、どこを取ってもいいのだが、カッコつけていないロバート・レッドフォードのカッコよさっていうのが、またいい。

 これだけの豪華キャストで、これだけのクォリティを見せながら、日本では劇場未公開というのは、いったいなんなんだろう。

 アイナーもジーンもグリフも傷だらけである。ミッチだって体の傷よりもっと大きな痛みを心に刻んでいる。
 体の傷と痛みは時間や薬によって消すこともできるが、心だとそうはいかない。そうはいかないんだけれど、その痛みを引きずって、あるいは自分が傷を抱えていることに甘えて、そこにとどまっているわけにもいかない。
 なにしろ人生は続く(UNFINISHED LIFE)のだ。続けるために終わらせなければならないものもあるのだ。
 そんなことを語りかけてくる、理屈じゃなくて感情的な部分で「好き」といいたくなる、優しい映画である。

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