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2008/02/13

すべてはその朝始まった

監督:ミカエル・ハフストロム
出演:クライヴ・オーウェン/ジェニファー・アニストン/ヴァンサン・カッセル/メリッサ・ジョージ/RZA/アディソン・ティムリン/ジャンカルロ・エスポジート/Xzibit/デニス・オヘア/トム・コンティ

30点満点中19点=監4/話4/出4/芸3/技4

【ある朝の、人生からの脱線がもたらしたもの】
 チャールズはシカゴの広告マン。糖尿病を患う娘エイミーへの愛は変わらなかったが、妻ディアナとの仲は冷えはじめていた。ある朝、投資コンサルタントのルシンダと知り合ったチャールズは、彼女への思いを深め、ついにふたりは安ホテルで一夜をともにすることとなる。だが賊が乱入、金を奪ったうえルシンダに暴行して去る。さらに犯人のラロッシュはチャールズを脅迫、彼が娘の手術費として蓄えてあった大金をせしめようとする……。
(2005年 アメリカ)

【ガチっとした作りは、自分好み】
 辞書によると「不倫」とは、人道・人倫(人としておこなうべき行為)に背くこと。いつからか「浮気」に代わって使われるようになった言葉だが、要するに妻子ある身で他人との情事に臨むのは“人でなし”ってわけだ(ちなみに浮気は「他の異性に心を移すこと」とあるが「人として間違い」とは書かれていないな)。
 人としての道を踏み外したなら、災難に見舞われるのも当然か。

 当然を当然と思わせないよう(つまり「こんな災難、絶対ヤだ!」と観る者に感じさせるよう)、ヴァンサン・カッセルのラロッシュは禍々しさと凶悪さをたっぷり噴出させてチャールズを追い詰める。チャールズのクライヴ・オーウェンも、持ち前の「生まれながらの暗い顔」をそのまんま首の上に乗っけて苦悩する。逆にルシンダのジェニファー・アニストンは、生来の可愛さを閉じ込めて眉間に頬にシワを寄せる。
 実に的確なキャスティングだ。

 その3人を、丁寧にカメラが追う。特に印象的なのが、チャールズのフルショットの多用。家庭で、オフィスで、街角で、ぽつねんと佇んだりトボトボと歩いたりする彼の全身をポンっと映すことで、この男が、もはや抜け出すことのできない泥沼に両の足を突っ込んでいることを表現する。
 青みがかった風景からは焦燥感もひしひし。細かくカットを割ったり、携帯電話やバッグやパソコン画面といったキーアイテムをスマートに画面の中に収めたりといった手際も見事。撮影は『ラヴェンダーの咲く庭で』で「見せるべきものを画面の中心にちゃんと据える」実直な絵を作ったピーター・ビジウ、編集は『ツイステッド』で軽快さを生んだピーター・ボイルだ。

 音楽は『ウィンブルドン』『スケルトン・キー』で展開の軽快さを過不足なく支えたエドワード・シェアマーで、ここでも過度におどろおどろしくならない程度にサスペンスを盛り上げる音作り。
 脚本は『コラテラル』で「まったく飽きさせず、先を読ませない」ストーリーを紡いだ(人物造形には甘さがあったが)スチュアート・ビーティー。最近ではこの手の話を前にすると「どうせウラがあるんだろ?」と観るほうも勘ぐったり身構えたりしてしまうものなのだが、そのハンデを乗り越えるまとめかただったと思う。

 要するに、適材適所。それぞれが自分の仕事をカチっとまっとうし、それらを演出が綺麗にコーディネートしつつ、「重いけれどテンポよく進む」という絶妙のリズムも作り出していて、自分好みの作りになっている。
 ああ「唇に触れないキス」っていうエピソードも自分好みだなぁ。

 原題は『DERAILED』で、訳すれば「脱線」。チャールズにとってそれは、あの朝の電車の中の出来事やルシンダに電話をかけてしまったことだけではなく、そこから始まったすべての成り行きを指すのだろう。
 妻にも娘にも、犬にまで“ないがしろ”にされている彼にとって、いまの生活や家族は命を賭けて守るほどのものではない。だからすぐに警察に駆け込もうとし、犯罪者に解決を任せようともする。そもそも「不倫」じたい浅はかなわけだし。浅はかなオトコ。するべくして脱線したオトコ。
 が、その浅はかさ、苦労ばっかりで報われることのない生き様が、チャールズそのものなのだ。やっぱり彼に守るものがあるとすれば、そんな脱線前の自分、敷かれたレールの上を文句もいわず走り続ける自分しかないのだ。脅されてあたふたするってのは、彼の“ないがしろ”的人生にはあってはならないことなのだ。

 だからこそチャールズは、もういちど自分をレールの上に戻そうとする。これは単に「脱線」を描いた作品ではなく、腹をくくった「復旧」を(ガチッとした作りで)見せる映画である。

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投稿: スーパーコピーブランド クロムハーツ zippo | 2021/07/06 09:37

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