ヘイヴン 堕ちた楽園
監督:フランク・E・フラワーズ
出演:オーランド・ブルーム/ゾーイ・サルダナ/アンソニー・マッキー/ムフォ・コアホ/ロバート・ウィズタム/リー・イングルビー/スティーヴン・ディレイン/ビル・パクストン/アグネス・ブルックナー/ヴィクター・ラサック/ラザーク・アドティ/ジョイ・ブライアント
30点満点中16点=監3/話2/出4/芸3/技4
【南の島ケイマンで、哀しみの連鎖が広がる】
ケイマン島。漁師のシャイは、雇い主であるスターリング氏の娘アンドレアと恋に落ちるが、横暴なスターリングや、その長男ハンマーによってふたりは引き裂かれてしまう。いっぽうマイアミ在住のカール・リドリーは脱税がFBIに知られるところとなり、友人の弁護士アレンを頼ってタックス・ヘイヴンであるケイマンへと逃げる。無理やり連れてこられた娘のピッパは地元の青年フリッツに誘われてパーティに出ることになるのだが……。
(2004年 アメリカ/イギリス/ドイツ/スペイン)
【借り物の要素、浅い内容】
時制をあれやこれやイジクるのは『メメント』以来のハヤリといえるだろうか。ただ、そうすることで驚きをもたらす作品や、そうすることに意味のある作品を実現しなければならないと思う。
加えて本作では、2つのエピソードをクロスオーバーさせる構成も採用。こちらも昨今のハヤリであるが、やはり、そうすることで意外な真実を暴き出したり世界の“つながり感”を創出したりなど、意味がないとダメ。
成功例をあげれば『21グラム』や『バベル』、それから『11:14』に『運命じゃない人』あたり。
本作は、“たいしたことのない話に少しでも深みを与える”ため時制に手を加え、エピソードを交差させたというパターン。それはソコソコには成功している(そのまんまなら夏の深夜の2時間ドラマ、というレベルだし)けれど、「だから?」という域を脱してはいない。
だいたい、リドリー&ピッパのエピソードはどうでもいい話であって、それが入ってきたおかげでシャイとアンドレアの悲恋を描き切れずに終わっている。
各エピソード・各キャラクターをもう少し練り上げて、たとえばハンマーの葛藤とかアレン氏の深い悪巧みとかを掘り下げて「ちょっとしたキッカケで道を踏み外す人々、その堕落の底にある人間の“甘え”」というテーマを鮮明に打ち出せていれば、もっともっと面白い話になったのだが。
撮りかたは、ジャンプカットや早送りを多用し、手持ちカメラのブレも強調して、デジタルな色調整で南東の日差しを再現、と、トニー・スコットあたりを思わせるスタイリッシュな作り。これまたハヤリといえる。
要するに、ハヤっているスタイルをとりあえず組み合わせて作ってみたらこうなりました、の映画。
キャスティングがビックリするくらい各役柄にハマっていること+ムダに長くしなかったことが効いて退屈せずに観ることはできるが、しょせん借り物の要素で仕上げられた内容の浅い作品だから、心を動かされることはないのである。
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