« トランスアメリカ | トップページ | 記憶の棘 »

2008/03/06

Sad Movie サッド・ムービー

監督:クォン・ジョングァン
出演:チョン・ウソン/イム・スジョン/チャ・テヒョン/ソン・テヨン/イ・ギウ/シン・ミナ/ヨム・ジョンア/ヨ・ジング

30点満点中16点=監4/話3/出4/芸3/技2

【雨が降る。4つの別れがやって来る】
 消防士ジヌの身を案じる、手話キャスターのスジョン。その妹スウンは画学生サンギュに恋心を抱くが、想いを伝えられない秘密を抱えていた。彼女らが買い物に訪れるスーパーで働くスッキョンは、停職に就かない恋人ハソクと別れることを決意。ハソクは一念発起して「別れさせ屋」という商売を始める。ハソクが夜の公園で出会ったフィチャンは、忙しい母ジュヨンが入院して「いつも顔を見られる」と喜ぶ。それぞれの別れが近づく……。
(2005年 韓国)

【丁寧に作られているけれど、スッキリしない】
 てっきり“泣かせる映画”だと思っていたのだが、さにあらず。登場人物が“泣く”映画だった。しかも、救いがなくって、やるせない。それぞれが経験した別れと涙が、彼ら彼女らを一歩前に進ませるものになったかといえば、そうじゃない。ただ“泣く”しかない、そんな物語なのだ。
 カタルシスは味わえないし、軽快に描いているぶん余計に、救いのなさがモヤモヤを残す、そんな映画なのだ。

 ただ、丁寧に作られていることはわかる。
 前半部ではそれぞれの関係における心の近さと遠さをしっかりとすくい上げ、中盤ではフィチャンとジュヨンの「時間を超えた日記での会話」が構造的な面白さを感じさせるし、後半もクドクドすることはない(スジョンがビデオを観る場面で、手話に字幕や独白をつけなかったのがエライ。同じようなシチュエーションで失敗しちゃったのが『フラガール』だ)。雨を縦軸にして、それぞれのすれ違いや愛や別れを適度な濃さで描いていくバランス感覚は、なかなかのものだ。
 段取り通りだなと感じさせる人物の動き、やたらとフィルターや陰や揺れを使いたがるカメラはイマイチだが、ケータイ・メールの処理のユニークさや消防車を4~5台使って貧乏クサさを排したところなど、考えて、力をこめて作っているなぁと感じさせる。

 なにより上質なのは出演陣。チョン・ウソンは、こういう野暮天職業人にはピッタリだし、チャ・テヒョンも持ち前の情けなさと優しさを全開。ヨ・ジングくんもしっかりと寂しく悲しい小学生を演じ切る。
 そして、女優陣。とにっかくキレイ。これ観るとソウルに行きたくなるくらい美人ぞろい

 でも、やっぱり、スッキリしない。悲しさはあるけれど、切なさへと踏み込んでいくことはない。観客を泣かせようとしたとも思えない。
 存在意義が、よくわからん作品だ。

|

« トランスアメリカ | トップページ | 記憶の棘 »

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: Sad Movie サッド・ムービー:

« トランスアメリカ | トップページ | 記憶の棘 »