奇人たちの晩餐会
監督:フランシス・ヴェベール
出演:ジャック・ヴィルレ/ティエリー・レルミット/フランシス・ユステール/ダニエル・プレヴォスト/アレクサンドラ・ヴァンダヌート/カトリーヌ・フロ
30点満点中17点=監3/話4/出4/芸3/技3
【超の上に超のつくバカが、思わぬ事態を引き起こす】
その晩餐会は、金持ちたちの密かな楽しみ。バカを招待して喋らせ、一番のバカを決めようというのだ。出版社の社長ブロシャンが今回選んだのは、マッチ棒で世界の名所を作るのが趣味という税務署職員ピニョン。自分がバカ扱いされているとは知らぬピニョンは「出版のチャンス」と、いそいそ出かける。いっぽう、そんなブロシャンの趣味を忌み嫌う妻のクリスティーヌは家出。おまけにブロシャンはゴルフの最中にぎっくり腰を患って……。
(1998年 フランス)
【笑ってるだけじゃダメなのかも】
本来はバカにされるはずだったピニョンと、その友人でやっぱりバカかも知れないシュヴァルが、いつの間にやらその場の主導権をにぎり、ブロシャンを翻弄する様子がテンポよく描かれる。「ブロシャンが、自身のマヌケな体験談をピニョンに聞かせる」という“立場の逆転”もあったりして。
さらにはバカ=実直で、だからこそ事態を収めることもできる、といった世の中の真理もこめられている。
ただ、立場の逆転が引き起こすシニカルな笑いや「たとえバカでも真面目に暮らすのが一番だ」というメッセージよりもむしろ、「やっぱピニョンってバカじゃん」というダイレクトな笑いのほうに重心が置かれている印象。
そんな、作品としての姿勢を明確にするのがブロシャンの友人、かつて恋人クリスティーヌをブロシャンに奪われたルブランの存在だ。この人ひたすらに、ピニョンが見せるあまりのバカさ加減と、それに振り回されるブロシャンの困惑とをクスクス笑いながら見ている。そして、観る者がもっとも感情移入しやすい(もっとも真っ当な)のも、この人。
つまり「人をバカにしていると痛い目に遭いますよ」というお話でありながら、この映画自体がバカを笑い、気に食わないヤツが困っているのを見て溜飲を下げるという内容になっているのだ。
どうやら人は、他人の不幸が大好きで、自分よりバカな存在も大好きであるらしい。そうした人間の卑小さを感じ取るべきなのだろうが、なにしろピニョンは“超の上に超のつくバカ”なので、やっぱりゲラゲラと笑ってしまうのである。
会話中のふたりを交互にうつす単調なカットが目についたり、舞台劇っぽかったり香港製のベタコメディっぽかったりして、映画としての仕上がりはそれほど上質ではないけれど、笑えて、と同時に「でもやっぱり、これを見て笑っている自分もいつかは痛い目に遭うんだろうな」という怖さもうっすらと感じてしまう作品。
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