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2008/03/12

不機嫌な赤いバラ

監督:ヒュー・ウィルソン
出演:シャーリー・マクレーン/ニコラス・ケイジ/オースティン・ペンドルトン/エドワード・アルバート/ジェームズ・レブホーン/リチャード・グリフィス/ジョン・ロゼリウス/デヴィッド・グラフ/ドン・イエッソ/ジェームズ・ラリー/ブラント・フォン・ホフマン/ハリー・J・レニックス/スーザン・ブロンマルト/デイル・ダイ/スティーヴン・S・チェン

30点満点中19点=監4/話4/出4/芸4/技3

【元大統領夫人に悩まされるシークレット・サービス】
 現在も政界への影響力を持つ元大統領夫人、テス・カーライル。その警護責任者であるシークレット・サービスのダグラス・チェズニックは、ようやく任期を終えてワシントンへ帰還、より重要な任務に就こうと意欲を燃やすものの、すぐさまテスに呼び戻される。以前にも増して気難しくてわがままになったテスに対し、苛立ちを募らせるダグラス。だがテスは他人にいえない秘密を抱え、そして事件が彼女の足もとに忍び寄ろうとしていた。
(1994年 アメリカ)

【特別なことをしなくても面白い映画は撮れる】
 フツーの映画である。気負ったところも映画的な工夫も少なく、感心できる絵といえばせいぜいシガレット・ライターを持つダグの手をアップで捉えたカットくらいだろう。
 なのに、面白い

 テスが、どれくらいの力を持っているのかがキッチリと(大衆からの人気の高さだけじゃない。彼女は夫の死後、何も手につかなくなっても不思議じゃないのにちゃんと後継者を支援したのだ)示される。
 テスが、なぜダグにこだわるのかも見せてくれる。
 警報が鳴ってもノンビリ構えているスタッフの姿に、テスがふだんからどれだけわがまま放題に振る舞っているかがわかる。
 そんなテスを、実は誰も憎くは思っておらず、単なる「仕事」以上の熱意で警護にあたっていることがキッチンの空気から伝わってくる。ラストに近づくに連れて次第に誇らしげな表情になっていくシークレット・サービスたちの姿からは、ひとりの老女と気長に付き合ってきた者たちのプライドも感じられるじゃないか。

 そうした光景(ロケーションも、テスの家の美術造形もいい)を、ひとつずつ丁寧に、実直に、モーツァルトに乗せてテンポよく緩急豊かにつないでいく。寄るべきところではスっと、ダグやテスの顔へとカメラは寄っておのおのの心情をすくい取る。

 寄られるニコラス・ケイジとシャーリー・マクレーンが、抜群にいい。
 余計な言葉を口に出さず、苛立ちと焦りと優しさと生真面目さと虚勢とを自然ににじませるダグ=ニコラス・ケイジは、こうした“振り回され型”の主人公をやらせれば天下一品。気難しさと寂しさと厳しさと愛情とが心の中に同居するテス=シャーリー・マクレーンも、貫禄で“チャーミングな嫌われ役”を演じきる。
 ちなみに大統領の声は監督のヒュー・ウィルソン自身。高圧的・事務的な口調の中に困惑と打算とを漂わせて、なかなかいいスパイス。

 それらのパーツが混然となって、1つの流れを作り出し、感動を呼ぶ。
 特別なことや大仰なことをしなくっても、しっかりした脚本といい役者とをそろえて真っ当に撮れば、いい映画が出来上がるという見本である。

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