ブルーベルベット
監督:デヴィッド・リンチ
出演:カイル・マクラクラン/イザベラ・ロッセリーニ/デニス・ホッパー/ローラ・ダーン/ジョージ・ディッカーソン/ブラッド・ドゥーリフ
30点満点中14点=監3/話2/出3/芸3/技3
【切断された耳、そこから広がる世界】
入院した父を見舞うため実家へと戻った大学生のジェフリーは、野原で切り落とされた人間の耳を見つけた。ウィリアムズ刑事に報告した彼は、刑事の娘サンディから、警察がドロシー・ヴァレンスという歌手をマークしていることを聞かされる。事件を自分の手で調べようと、ヴァレンスのアパートへ侵入するヴァレンス。そこで見たものは、倒錯した性をヴァレンスに要求する男・フランクと、精神的に追い詰められたヴァレンスの姿だった。
(1986年 アメリカ)
【観なくてもいいものを観た】
のっけから、歪み感たっぷりの主題歌と、白、黄、赤、青が鮮烈に刻まれる世界。期待が高まる。が、そこで終わり。
不条理なのは、いいんですよ。どうせ世の中イタいヤツばっか。妙なプレイを求めたり、わけのわからん夢を語ったり、精神の変調から奇怪な行動を取ったり、さんざん踏み込んでおいて「ここからは警察の仕事」と投げ出そうとしたり……。
そうした人々がたどる事件の(予想外のことばかり起こる)経緯と顛末を描いた本作には、理路整然とした展開もカタルシスもないけれど、それはある意味でリアルだ。
ただ、どうも“そのまんま”感が強い。特に前半部は撮りすぎ・語りすぎで、これから何をするかをジェフリーにまず説明させておいて、そのまんまのことをやらせている。クローゼットの中からの視線、それがリピートされるクライマックスでのジェフリーとフランクとの対峙はスリリングだけれど、それ以外に強く迫ってくるところはなく、ダラダラと出来事が続くだけだ。
弾けるところも、『ワイルド・アット・ハート』のように読み取らせるところもなくて、ズドンとみぞおちに突きつけられる衝撃や観ている者を絡め取ってズルズル引き込んでいく空気もなくて(自分の鑑賞眼のなさは棚に上げておく)、ただダラダラ。
かつて“あっち側の人”だと感じたリンチ。それは『イレイザーヘッド』から得た「観てはならないものを観た」という印象からだった。
でも今回は「別に観なくてもいいものを観た」という感じ。
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