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2008/04/11

ギャングスター・ナンバー1

監督:ポール・マクギガン
出演:ポール・ベタニー/マルコム・マクダウェル/デヴィッド・シューリス/サフロン・バロウズ/ケネス・クラナム/ジェイミー・フォアマン/アンドリュー・リンカーン/ラザーク・アドティ/エディ・マーサン

30点満点中16点=監4/話2/出3/芸4/技3

【彼を超えるため、若者は狂気を武器とする】
 冷酷で知られるフレディ・メイズの手下となった若い男。彼=ギャングスターは凶暴さを表に出してメイズのために働き、と同時に歪んだ熱望を募らせていく。豪勢な服と住まいに囲まれて紳士的に振る舞うボスが座る、そのソファを、いつか自分の居場所にするのだと。歌手志望の踊り子カレンに熱を上げるボスの姿を快く思わないギャングスターは、対抗する組織のボスであるレニー・テイラーの企てを知り、一計を案じるのだった。
(2000年 イギリス/ドイツ/アイルランド)

【人物造形と動機が薄いので、おさまりが悪い】
 ヒネった物語とスタイリッシュな映像と登場人物の小悪党ぶりがいいマッチングを示していた『ラッキーナンバー7』を撮ったポール・マクギガンの出世作。が、こちらはどうもバランスが悪いというか、おさまりが悪いというか。

 見せかたとしては、まずまず面白い。「70年代の日テレドラマ風」と評した作品は過去にも多々あったが、本作ほどその表現がピッタリとくるものはない。ちょっとサイケで、ちょっとノリノリの音楽で、ちょっと野暮ったくて、かなりイキがってて。そんな、ギャングどもがうごめく空間へと、手持ちカメラを中心に使って潜り込んでいく。ギャングスターに寄り添う、その奇妙な距離感が良好だ。
 やられる側の一人称視点というショッキングな絵作り、神経質なカッティングによるスタイリッシュさもいい。

 が、その猥雑さの中にあるはずの、キャラクターの魅力と説得力が決定的に欠けている。これが痛い。
 本来、(A)冷徹に物事を進めて闇社会に君臨するメイズと、(B)彼に憧れるが狂気と暴力でしか自己表現できない若者、という対比が物語の焦点になっているはず。ところがAの描写がまったくなく、悪事といえば乱暴な借金の取り立てくらいだわ、手下は少ないわ、その手下を自分で運転するクルマに乗せてやるわ、カレンに心を奪われる様子も中途半端だわ……、ただのチンピラレベル。
 なのに無理やりBだけ引っ張り出してくるもんだから、B=ギャングスターの人物造形が光らない。これじゃあ「あんな高級な服を俺も着たいなぁ」程度の動機で行動する、やっぱりただのチンピラだ。
 つまり動機の部分が薄いので、マルコム・マクダウェルと、その若かりし頃を髣髴とさせるポール・ベタニーを起用して『時計じかけのオレンジ』を想起させるのだが、そこから湧き上がってくるはずの狂気が“浮いた”ものになってしまっている。

 カレン役サフロン・バロウズは可愛いけれど、別にいなくたって構わないわけだし(というかメイズにとっての重要性がまったく描けていない)、グチョグチョの力演を見せるエディ・マーサンのエディの役どころだって、もっともっと掘り下げることはできただろうに。

 必ずしも「映画にテーマは不可欠」とは思わないけれど、何を描こうとするのかを疎かにするとおさまりの悪い仕上がりになってしまいますよ、という見本のように感じる。

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