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2008/04/15

サージェント・ペッパー ぼくの友だち

監督:サンドラ・ネットルベック
出演:ニール・レナート・トーマス/カロリン・プライン/ウルリク・トムセン/ヨハンナ・テア・ステーゲ/バルバラ・アウアー/オリヴァー・ブロウミス/アウグスト・ツィルナー/リチャード・ホープ/ジョン・フランクリン・ロビンス/フロリアン・ルーカス(声の出演)/クレオ(犬)

30点満点中16点=監3/話2/出5/芸4/技2

【ただひとりの友だちを、ぼくは守るんだ】
 ゴルデンタール男爵の莫大な遺産を相続したのは、飼い犬のサージェント・ペッパー。これを快く思わない男爵の娘コリーナと息子のシモンは、サージェント・ペッパーを処分しようとする。サージェント・ペッパーが逃げ込んだのは、発明家のパパ、音楽家のママ、行動派のお姉ちゃんフェリシア、そしてトラの着ぐるみを着て暮らすフェリックスからなるジンガー家。サージェント・ペッパーと会話のできるフェリックスの奮闘が始まる。
(2004年 ドイツ/イタリア/イギリス)

【終盤で気になる浅さ。でも、すこぶる可愛い】
 序盤は、かなり良質。軽快で、思わず首を左右に振ってしまう音楽(ガイ・フレッチャーによるサウンドトラックは全編に渡って実に楽しい)&オープニング・タイトルから始まり、フェリックスを取り巻く環境がテンポよく描かれる。
 そして少しずつ顔をのぞかせるテーマ性。子ども向けのように思えて、実はこれ、子を持つ親を対象とした“育てかた”映画なんだな。

 白を大きく背景に使った画面、発明品で満たされた家、さまざまな場所からあふれ出てくる音。ちょっと変わった男の子と、なんでもかんでもやろうとする女の子。そうやって、子どもを育てる環境をどう作るかについての重要性と、子どもはどうにでも育つという事実が説かれる。
 ややハイキーなのは、この世界が“可能性”という光に覆われた世界であることの暗示だろうか。
 サージェント・ペッパーが逃げおおせたことを知ったシモンが、横顔でポロリと喜びを表す、そのサラリ感もいい。

 ところが終盤、展開が強引になり、ドタバタへと向かうに連れてテーマ性も薄れていく。本来なら「育てかたと育ちかた」「その実践者である親と、具現化である子どもの関係」へと物語を掘り下げていくべきところを、ただの「いっしょにいられてよかったね」へと収束させていく。
 どうも、浅い

 だいたい、フェリックス以外はキャラクター設定があいまいだ。発明家のパパ、音楽家のママ、行動派のお姉ちゃんという位置づけはいいとしても、それがストーリー展開やメッセージに対するキーとして働いていない。
 結果、「う~ん。まぁ可愛い映画なんだけれどね」で終わってしまう。

 そう、可愛い。すこぶる可愛い。サージェント・ペッパーを演じたクレオの芸達者ぶりも見事だが、その数段上をいくのがニール・レナート・トーマス君のノーブルな可愛らしさだ。着ぐるみを身にまとう子どもなんて少女マンガの専売特許であるはずだが、こんなにもショタ心をくすぐる存在として実体化できるとは、驚きですらある。
 もうね、イスの上で丸くなる姿なんか、食べたいくらいですよ。

 そのキュートな姿を観るだけでも値打ちのある作品ではあるが、まとまりとしてはちょっと雑。同監督の作品『マーサの幸せレシピ』はメッセージとストーリーとを上手に絡めてまとめてみせたが、こちらは「ジョン・ヒューズ~クリス・コロンバスのラインを狙って、ちょっと失敗したかな」という仕上がりになっている。

 でもホント、可愛らしくて愛らしくて楽しい映画ではあるんだけれど。

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