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2008/06/26

恋愛睡眠のすすめ

監督:ミシェル・ゴンドリー
出演:ガエル・ガルシア・ベルナル/シャルロット・ゲンズブール/アラン・シャバ/エマ・ドゥ・コーヌ/オレリア・プティ/サッシャ・ブルド/ミュウ=ミュウ

30点満点中16点=監3/話2/出4/芸4/技3

【夢の中の僕、夢に見る君】
 父が死んだため、ステファンは生まれ故郷のパリへと戻ってきた。母が口利きしてくれた仕事は思い描いていたクリエイティヴなものとは異なり、企業が使う販促用カレンダーの簡単なデザイン。憂鬱な気分を隠せないステファンだったが、幼い頃に住んでいたアパートに入居し、ステファニーという素敵な隣人と知り合う。夢の中で母へのイライラとステファニーへの想いを募らせていくステファン。やがて現実と夢との境界線が溶けはじめる。
(2006年 フランス)

【陰にこもって、迫るものがない】
 対象に近寄る手持ちカメラ、ソフトフォーカス、ジャンプカットの多用といった絵作りは『エターナル・サンシャイン』と同様。さらに今回は「そこにあるもので語る」という上手さも見せてくれる。
 たとえば、ガラクタや発明品など思い出でいっぱいの部屋にある電気カミソリ、そこから微かに漂う亡き父の影。

 キーとなる“夢”も、コミカルにシステム化・ヴィジュアル化されていてクスクス笑いを誘う。
 ダンボールやセロファンを利用した「ふたりの世界」の構築も、なかなかに微笑ましい。

 ただ、そうした見た目だけが勝ちすぎて、どうも薄い。『エターナル・サンシャイン』には、「人は愚かな生き物である。が、だからこそ愛おしい」というテーマへ向けてぎゅっと収束していく温かさがあった。ところが今作は、どうも陰にこもっている。ステファンのアパートの中だけで、ステファンの妄想だけがぐるぐると渦巻いて、そこで完結してしまっている。
 早い話、ダメ男の妄想でしかないのだ。一見、ゴチャゴチャとした変化球に思えて実は、ステファンのパーソナルな混沌をそのまんま映像化したに過ぎないのである。

 ま、人が恋に落ちる瞬間や、その恋を成就させるまでの時間、そこで当事者が叩き落とされる熱にうなされた混沌の世界を、“夢”というツールを使って上手にまとめた映画だとはいえる。が、画面からこちらへ向かって強烈に迫ってくるものがない。

 思うに、ステファニーに魅力がないことが痛い。いや、シャルロット・ゲンズブールは可愛いんだけれど、ステファニーというキャラクターに奥行きや説得力がなくて、「主人公が惚れる対象」としては弱いのだ。だからステファンのモヤモヤや困惑に感情移入することができず、迫ってくるものを感じ取ることもできないのだろう。

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