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2008/06/08

明日に向って撃て!

監督:ジョージ・ロイ・ヒル
出演:ポール・ニューマン/ロバート・レッドフォード/キャサリン・ロス/ストローザー・マーティン/ジェフ・コーリィ/ジョージ・ファース

30点満点中20点=監4/話4/出5/芸4/技3

【ブッチとサンダンスの逃亡劇】
 悪だくみを得意とするブッチ・キャシディと相棒で早撃ちのサンダンス・キッド、そして配下の強盗団たちは、鮮やかな仕事ぶりで西部にその名を轟かせていた。銀行の警備が堅くなったことから列車を襲う彼らだったが、鉄道会社の社長に雇われた凄腕の保安官らからなる追跡団に追われ、仲間はバラバラになってしまう。辛くも追っ手をまいたブッチとサンダンスは、追跡の手が届かない南米ボリビアへ向かおうとするのだが……。
(1969年 アメリカ)

【当たり前のように、そこにいる】
 20代の頃、ブッチとサンダンスのポスターを部屋に貼ってたっけ。この憎めないふたりの悪党は、ずっと心のヒーローである。

 映画としての魅力も、このふたり、ブッチ=ポール・ニューマン&サンダンス=ロバート・レッドフォードの男前さと彼らのユニークなかけあいに負うところが大きいのだが、今回あらためて“作りの確かさ”も感じられた。

 銀行の様子やボス交代劇などで、もはや彼らの時代ではないことを印象づける序盤。さらに、かの有名な自転車のシーンで、ふたりがいかに刹那的・享楽的に生きているかが示される。
 と同時に、アウトローならではの殺伐な人生と、その中でどのようにしてやすらぎを得ているかを、エッタの登場シーンでのみBGMを使うという手法で描き出す。
 こけおどしの効果音やセリフに頼らず、ただ無言の男たちの表情を撮るだけでスリルは高まること、追跡者に顔がないだけで追われる恐怖が倍増することなども教えてくれる。

 そして、ああこれは「行動をともにする理由」をテーマとする映画なのだなと気づく。
 いや、ブッチとサンダンスの“結びつき”が直接語られることはない。けれど、強権で仲間を得ようとする者、保安官の呼びかけに応えようとしない市民、金で雇われた追跡団、さらには女という異生物、それら“心の結びつきのない人たち”をふたりの周辺に散らすことによって、ブッチとサンダンスの「当たり前のように、そこにいる」関係が際立ってくるのだ。
 おたがいの生まれも本名も知らないことが、なおいっそう、確固たる理由もないのに当たり前のように行動をともにする、このふたりの特殊な関係を魅力的なものにする。
 特定の目的を果たすために「ともにいる」のではなく、「そこにお前がいるから、いっしょに何かをする」という関係。三谷版の『新選組!』における近藤さんと土方さんに近い。

 彼らは当たり前のように、ふたりそろって飛び出していく。
 描こうとしたものをそのまんま、観る者の記憶に焼きつける、映画史上に燦然と輝く最高のラストカットである。

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