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2008/07/30

ピーターと狼/マダム・トゥトゥリ・プトゥリ

●ピーターと狼
(2006年 イギリス/ポーランド/ノルウェー アニメ)
監督:スージー・テンプルトン
30点満点中18点=監4/話3/出4/芸3/技4

●マダム・トゥトゥリ・プトゥリ
(2007年 カナダ アニメ)
監督:クリス・レイヴィス/マチェック・スチェボウスキー
30点満点中19点=監4/話2/出4/芸4/技5

【2008年オスカー受賞&ノミネート作】
 内気な少年ピーターは、お爺さんの目を盗んで、仲良しのアヒルや迷い込んだ風船カラスとともに出入りを禁じられている裏庭へ。そこに現れたのは一匹の狼と、横暴なハンターだった……「ピーターと狼」/荒野の中、ひとりでは持ちきれないほどの大荷物を抱えて長距離列車へと乗り込む御婦人。だが、怪しげな乗客、突然の停止と不思議な光、不気味な影とガスが彼女を怯えさせる……「マダム・トゥトゥリ・プトゥリ」

【最上級の人形アニメ】
 人形アニメの登場人物が、こんなにも豊かな表情を見せるとは驚きだ。ピーターの、あの凛とした視線(ついでにかなりの美形)。そしてマダムの目の演技。
 どうやら『マダム・トゥトゥリ・プトゥリ』のほうは、目の部分だけをCGや実写で用意して人形と合成しているらしく、それが絶大な効果を生んでいる。

 表情だけでなく、全身を使った表現も秀逸。マダムの首から肩、腕にかけてのラインをはじめとしたプロポーション、指先や足先の細かな動きは実に優美だ。ピーターやアヒルたちのユーモラスな挙動も可愛い。
 美術表現的にも、リアルな服のシワ、灯り、暗い列車内、吹雪、風、森、うすら寒そうな街並……と、どちらの作品でも見事な世界が創り上げられている。

 それらをまとめ上げる演出・撮影の技法も上質で、列車の揺れを鮮やかに再現したり、視線を追うようにカメラが動いたり、奥と手前との距離感を上手に作った構図で画面に立体感を与えたりと、実にバリエーション豊かな絵を見せてくれる。
 音の緩急でもたらされる展開の緊張と弛緩、プロコフィエフの原曲通りにわかりやすく進む物語など、音楽とストーリーの一体感も味わえる。

『ピーターと狼』は29分、しかも「音楽劇の視覚化」という制作上の縛りがあり、『マダム・トゥトゥリ・プトゥリ』は16分の短尺。いずれもお話としては「頭の中で考えました」といった雰囲気の観念的なものとなっていて馴染みやすいとはいえないが、人形アニメとしては間違いなく最高クラスに位置づけられる作品2本だろう。

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