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2008/07/18

茄子 スーツケースの渡り鳥

監督:高坂希太郎
声の出演:大泉洋/山寺宏一/坂本真綾/大塚明夫/佐藤祐四/芝井伶太/白戸太朗/今中大介/藤村忠寿/嬉野雅道/江川央生/笹沼晃/坂口芳貞/平田広明/佐々木誠二

30点満点中17点=監4/話3/出3/芸3/技4

【チーム・パオパオ、日本を走る】
 ペペ・ベネンヘリらが所属する自転車ロードレースのチーム・パオパオビールは、来年の解散が決まっていた。それでも走り続ける彼ら。チョッチの憧れであり、トレーニング・パートナーでもあったマルコ・ロンダニーニの死を経て、舞台は日本、ジャパン・カップへ。豊城ひかるのサポートを得ながら、ペペ、チョッチ、レジオ、ニーノたちチーム・パオパオは、ギルモアのチーム・ゴルチンコらライバルとの雨中のデッドヒートを繰り広げる。
(2007年 日本 アニメ)

【背景に味あり】
 前作『茄子 アンダルシアの夏』は劇場公開で、今回はOVAらしい。そのせいか、作品としてのグレードは前作のほうが上に思える。

 前作から落ちた部分をまずあげると、色彩感覚。今回も田園風景や雪山など美しい風景を見せてくれるが、舞台の大半が空気のススけた日本とあってか、あのショッキングなまでの色合いが失われてしまったことが惜しい(まぁある意味リアルなんだが)。
 セル枚数も減ったのか、ところどころにギクシャクした動きが見られた。大泉洋ら声優陣の演技もちょっと鮮度が落ちたように思う。

 が、それ以外の部分は、しっかりと進化したというか、ベクトルを変えたおかげで見晴らしのいい作品になった、というイメージ。
 たとえば『カリオストロの城』や『未来少年コナン』を髣髴とさせる柔らかなライン&ややデフォルメされた動きを取り入れることによって、前作の不満点だった「アニメらしい弾けの少なさ」を解消してみせた。CGの使いかたもこなれてきた感じだ。

 もっともよくなったと思えたのは1つの作品としてのまとまりのよさ・楽しさ。前作同様「スポーツの試合の“背景”を切り取って描く」ことに徹しているわけだが、その手法がスッキリと実(み)になっている。作り手と登場人物たちとの距離の取りかたがいい、ともいえるだろう。
 マルコの死を抱えながらも淡々と自分ができることをやり遂げようとするチョッチ、ライバルたちとの駆け引き(スポーツとしての面白さ)、ひかるや充一や住職らのベタつかない程度のチームとの関わりあいかた、ザンコーニの行動……。
 そうしたさまざまなパーツが「試合で起こる出来事や結果には、こういうちょっとした心情の起伏・背景が隠されているんだろうな」「自転車好きが見れば唸るような細かな部分も盛り込まれているんだろうな」「まさにそういうことを読み取らせるために作られたんだろうな」ということを実感できる仕上がりとなっているのだ。

 なんということもない“ある出来事の背景”を描く。その作劇ベクトルと、「背景画を動かすことで画面全体に躍動感とスピード感を与える」という演出プランとのマッチングがまた楽しい。

 散文的ではあるし、セリフに「日本語で書かれた」というニュアンスが強かったようにも思えるが、全体に「こういう風に作りたかったんです」という意志を強く感じることのできる作品である。

 それにしても藤村Dのセリフ回し、場慣れしすぎ。

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