ピンチクリフ グランプリ
監督:イヴォ・カプリノ
声の出演:フランク・ロベルト/カリ・シモンセン/トラルフ・モールスタッド/ヘルゲ・レイス/ロルフ・ジャスト・ニルセン/ペール・セオドア・ホーゲン/レイフ・ジュスター
30点満点中18点=監4/話2/出3/芸4/技5
【白熱のレースを、イル・テンポ・ギガンテが走る!】
ピンチクリフ村の山のてっぺんで暮らすのは、修理工であり発明家でもあるレオドル。仕事は少なく貧しいけれど、マフラーを巻いた快活な鳥のソラン、臆病なハリネズミのルドビグとともに楽しく暮らしていた。が、レオドルの元弟子であるルドルフがレオドルの発明を盗んで自動車を開発、レースで連勝していることを知った彼ら。アラブの石油王ファファザンからの援助を受けて、イル・テンポ・ギガンテ号でレースへと乗り込む!
(1975年 ノルウェー アニメ)
【細かな動きに感心しきり】
30年以上も前に作られた人形アニメ、というのが信じられないくらい凄まじい動きを見せる。
指先が可愛らしく演技する。眉が上下し、しっぽが左右に揺れる。対象物の向こう、背景にも動きがある。自動車が急発進すると、乗っている人が慣性で後ろに反る。実に細かい。
驚異的なのがバンドの演奏シーンで、演奏やセリフにあわせてピアニストやバイオリニストやトロンボーン吹きやハープ弾きらの身体と指先が、これがもう“正確”に動くのだ。信じがたいほどのシンクロぶり。
またキャラクターの動作が、関節の存在を感じられるものになっていることにも感心させられる。腕と肩がちゃんと連動して動くのだ。
このシンクロと連動性は、ぜひともすべてのアニメーターに観てもらいたいと感じた。
演出もキレがよくって、ドライバーの見た目視点や画面をブォンと横切るクルマの影などを駆使して素晴らしいスピード感を創出。かと思えば、ルドビグの足どりはゆったりと、でも慌てたときにはチョコチョコと、シチュエーションに合わせていくつもの“速さ”が使い分けられているところが実に心憎い。
大きさ・奥行き・広がりを映し出すカメラアングルも手堅いし、レオドル家のドアが二重になっている(人間用と動物用)になっているところ、動物と暮らしているのに鹿の頭が飾ってある室内、干しぶどうが贅沢というほのぼの感など、世界の作り方も面白い。
音楽も軽快で、その場その場にふさわしい曲が場面を盛り上げる。ファファザンがレオドルの家に到着したことを、ファファザンの姿を見せず、ファファザンのテーマ曲によって観客に知らせる、なんていう音楽による演出も気が利いている。
クライマックスを含めて全体にアッサリとした感じでお話が進むのだが、その点をのぞけばなかなかに楽しい映画であり、人形アニメの大傑作といえるだろう。
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