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2008/07/02

カサノバ

監督:ラッセ・ハルストレム
出演:ヒース・レジャー/シエナ・ミラー/オミッド・ジャリリ/オリヴァー・プラット/レナ・オリン/チャーリー・コックス/ナタリー・ドーマー/スティーヴン・グリーフ/ヘレン・マクロリー/ジェレミー・アイアンズ

30点満点中18点=監4/話3/出4/芸4/技3

【いくつもの愛と、真実の愛】
 18世紀のヴェネチア。人妻や修道女と浮名を流し、悪名がローマにまで届くジャコモ・カサノバに、総督は「結婚して身を落ち着けなければ追放」と宣言。慌ててヴィクトリアという娘と婚約したものの、“真実の愛”を説くフランチェスカに心を奪われるカサノバ。ヴィクトリアに恋するジョバンニやフランチェスカの婚約者パプリッツィオ、カサノバ逮捕に執念を燃やすプッチ司教らが絡んで、愛の行方は右往左往するのだった。
(2005年 アメリカ)

【ドタバタの中に盛り込まれた真理】
 暗く湿った『ヴェニスの商人』とは対照的に、こちらは隅々まで明るくてヌケのいい絵柄。その画面は、本作がコメディだと知らせる。
 もともと作品の底辺にあたたかなユーモアのあるハルストレムだけれど、中でも本作は、かなりコメディ色が強い。細かく細かく笑わせてくれる。クライマックスなんか、ほとんどスラップスティックだし。剣戟などアクションもふんだんだ。

 その軽やかで楽しい雰囲気を徹底すべく、大きく動いて舞台を立体的に見せるカメラワークと丁寧なカット割が採用される。騒動の近くへと誘う華やかな衣装と音楽も良質だ。
 シナリオもスマート。いくぶん説明的なセリフが耳についたり強引な展開になったりするところもあるけれど、撒き散らした伏線を無駄なくスっとまとめてみせる手際はなかなかのもの。ライターとしてクレジットされているジェフリー・ハッチャーは『コロンボ』などのミステリーを手がけた人らしく、なるほどこの“整合性の保ちかた”はミステリーっぽくもある。

 出てくる女性みんなが美しいのもうれしいところ。シエナ・ミラーとかナタリー・ドーマーは、もうちょっとアップを多めにして欲しかったな、と思うくらい。
 そうそう、『ヴェニスの商人』にも出ていたジェレミー・アイアンズが、あっちより魅力的でおバカな人物を、あっちよりもナチュラルに演じているのも面白い。これは他の役者さんたちにもいえることだが、コメディだからといっていたずらにオーバーな演技をするのではなく、ふつうの芝居を見せてくれることで、小っちゃな笑いや、お話に埋め込まれた真理がスっとこちらに入ってくるのだ。

 そう、ただのドタバタにとどめず、ちゃんと人生の真理を埋め込むのがハルストレム監督らしいところ。「結婚は将来の保証」とか、サラっといってのけたり。
 なるほど愛ってのは“約束”であり、その約束に対する“信頼”でもあるのだなぁ。カサノバは「きっと戻る」という母の言葉を信じ続けた。フランチェスカは命と命の契りを求めた。カサノバの母は、その2つの信頼についての大いなる回答と手本を示した。パプリッツィオは俗物だけれど、俗物ゆえの純真さで、信頼に応えようと真っ直ぐに行動した。たぶんルポは、自分の生きかたを自分自身に約束していたのだ。
 いっぽうで、フランチェスカの母アンドレアは簡単に愛情を抱き、ジョバンニやヴィクトリアは愛と肉欲との曖昧な境界を生きる。そんな“愛の不確かさ”も盛り込まれる。
 そして、カタチはどうであっても、“愛の強さ”は変わらない。宗教はせっせと愛を説くけれど、その言葉1つ1つは、本物の愛にはとうていかなわないのである。
 うん、おバカな人たちが貫く愛は、実に清々しい

 先だってテレビで「結婚相手に求めるものは?」という質問に対する女性の回答第1位が「経済力」だというアンケート結果が示されていた。それだって恐らくは、まず愛があることが前提の答えなんだろう。あるいは男から見れば、女を「愛し続けます。幸せにします」といって口説くんだから、その約束を履行するためにはやっぱり経済力が必要なのだ。
 でもそこに、男と女の間の温度差というか、愛と約束と信頼に対する認識の違いがあったりして、相変わらず男と女はドタバタとあがくのだ。

 その“あがき”を、優しく描いた映画である。

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コメント

『ダークナイト』、かなり評判が高いみたいですね。特にヒース・レジャーの演技が。

当ブログでも『チョコレート』『ROCK YOU!』『カサノバ』『ブラザーズ・グリム』と取り上げていますが、
確かに出演作すべてで“違う顔”を見せてくれる希少な役者さんだったと思います。

合掌

投稿: たにがわ | 2008/08/04 22:07

バットマンの最新作、ダークナイト、試写会でみました。
私、ヒース・レジャースキだったんですよ。
だから、亡くなったときいたときはショックでした…
ものすごい怪演でした!
彼、いろんな顔を持っていたんですね…
もう観られないのが、残念でたまりません。

投稿: つばめ | 2008/08/04 10:41

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