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2008/07/08

時の支配者

監督:ルネ・ラルー
アニメーション監督:メビウス
声の出演:ジャン・ヴァルモント/ミシェル・エリアス/フレデリック・レグロ/モニーク・シエリー/イブ・マリー・モーリン/サディ・レボ/パトリック・ボージン/ピエーレ・トーニュ

30点満点中18点=監3/話4/出3/芸5/技3

【辺境の星で、少年が見たもの】
 砂漠と湖と森の星、ペルディド。巨大なスズメバチに襲われ妻を失ったクロードは友人のジャファールへ救難メッセージを送り、幼い息子ピエールにマイク(通信装置)を託して息絶える。訳ありの王子マトンと王女ベルを輸送中のジャファールだったが、急遽、ペルディドに詳しいシルバード老人やハスの妖精ジャド&ユーラとともにピエール救出へと向かう。が、その道中にはマトンの謀略やガンマ星の“儀式”など苦難が待ち構えていた。
(1982年 フランス/スイス/西ドイツ/ハンガリー アニメ)

【不思議な居心地の悪さに酔う】
 圧倒的なヴィジュアル・イメージが最大の特色。ペルディドの植物と動物と自然、ジャファールの宇宙船、ジャドとユーラ、2つの月、自我を失くして同一化を果たした有翼人種たち、タイム・マスターの乗る船……。
 古い年代の作品ではお馴染みのピヨピヨユラユラ音や、艦内の照明を再現する丁寧な彩色も、この幻想世界をしっかりと支える。

 やや間延びしている部分はあるものの、ストーリー展開と演出も良質だ。特に、イライラを募らせるようなオープニングの音楽から、ピエールの足もとを撃って安全な森へと追いやるクロードの行動、語尾にノイズの混じった救難信号、ドロンの森で退屈そうなピエールの様子まで、その焦燥感とリアリティと「助ける側と助けられる側の精神的ギャップ」を描き分ける序盤は上々である。
 お話的には、意外なタイム・パラドックスの登場、「人は美しさより価値に心を奪われる」「思想には勝てない」といった印象的なメッセージの挿入など、かなり刺激的だ。ことに、あの有翼人たちはヨーロッパの歴史をなぞるものであると同時に『イド』や『イデ』や『エヴァ』や『マトリックス』の直系先祖という印象もあって、なかなかに興味深い。

 造形もカラーもテンポもメッセージ性も、どこを取っても、現代日本人の価値観の裏っ側にゴリゴリとゲンコツを押しつけるような“不思議な居心地の悪さ”を醸し出していて、それが本作の魅力となっているわけだ。

 マトン王子の心情やジャファールとベルの関係描写、エピソードの連なりの妥当性、タイム・マスター出現にいたる伏線など、必要なのに欠けている要素は多いのだが、それを補って余りある“不思議さ”をたたえ、その幻惑的な世界に酔える映画といえるだろう。

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