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2008/07/06

パプリカ

監督:今敏
声の出演:林原めぐみ/古谷徹/堀勝之祐/大塚明夫/山寺宏一/田中秀幸/江守徹/筒井康隆

30点満点中17点=監3/話2/出4/芸4/技4

【夢の世界が、現実へと溶け出していく】
 時田が開発した「DCミニ」を中心とするサイコセラピーマシン。それは他者の夢の中へ入り込み、映像化することが可能なシステムだった。だが研究員の氷室がDCミニを奪い、自らの夢で島所長や時田らの脳を侵食し始める。理事長の乾は研究の中止を迫るが、セラピストの千葉敦子は美女“パプリカ”となって氷室の夢へ侵入。千葉の治療を受けている刑事・粉川とともに事態の収拾を図るが、何者かの夢がパプリカをも蝕みつつあった。
(2006年 日本 アニメ)

【色とりどり。が、それだけかも】
 鮮やかな色絵巻。絢爛たるグチャグチャ(色彩設計は橋本賢)が大脳皮質の裏側を刺激する。美術(池信孝)も映画数本分におよぶ世界を構築しつつそれをしっかりまとめてもいて鮮やか。今監督独特の無国籍な艶やかさは、この2要素(両者)に負うところが大きいと実感できる。
 描き込まれた細部、不思議とあざとさの少ない陰影、幾重にも重なるキャラクターの動きなど、作画も全体的に良質だ。

 物語の性質上、説明セリフが多くなるのは仕方ないとして、説明は説明と割り切り、「見てわからせる」部分も盛り込まれていて“映画であること”に配慮している(つまり何でもかんでもセリフで片づけない)とも感じる。シーンからシーンへの移行はスピーディでユニーク、ハイヒールを脱ぐ動作をポンと入れるのも自分好み。つまり演出も上々だろう。

 ただ、観終えた後に何が残るかというと、そうした“見た目”だけというのが寂しい。思うに、“乗り越え”が足りないのだ。

 作中でも述べられているように、夢というのは他人の干渉を許したくない聖域。いっぽうで自在にコントロールしたいという欲望もあり、逃げ場所や活力ともなるものだ。
 そんな、夢に対する価値観のせめぎあいが本作の1つのテーマであるはずなのに、価値観をぶつけあい、疑問に思いながらも他の価値観を乗り越えて自分の中に自分だけの夢を確立する、というステップが希薄なのだ。その部分を破壊やアクションや狂気などの“動”に頼って描き、内省や回顧や言動の変化といった“静”を盛り込めなかったため、登場人物にシンパシーを感じたり「自分の場合、夢というものは……」と考えることなく映画が終わってしまう、という感じ。
 黒幕の価値観VS研究員の価値観、という対立構図だけでなく、せっかく時田に対する敦子の想い、敦子とパプリカの関係、粉川の過去といったファクターも用意されているのだから、それらをキッチリと掘り下げて欲しかったと思う。

 ほかでは音楽が少々安っぽかったのと、きっかり30分ごとに挟まれる、恐らくはTVオンエア用のブラックアウトが、興覚め。
 逆に林原めぐみの、ボソッとした声(パプリカじゃなく敦子のほう)は、あらためて素敵だと確認。
 ああやっぱり、内容的な感想には結びつかないな。

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