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2008/08/01

インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国

監督:スティーヴン・スピルバーグ
出演:ハリソン・フォード/シア・ラブーフ/カレン・アレン/レイ・ウィンストン/ジョン・ハート/イゴール・ジジキン/ジム・ブロードベント/ケイト・ブランシェット

30点満点中20点=監4/話4/出4/芸4/技4

【秘宝の争奪戦は、砂漠、ジャングル、そして神殿へ】
 昔からの仲間マックに裏切られた考古学者インディ・ジョーンズ教授は、イリーナ・スパルコ率いるソ連の秘密部隊にミイラを奪われたものの、その追跡をかろうじて振り切る。息つく間なく、インディのもとにマットという青年が現れ、南米で姿を消した母と、父親代わりのオクスリー教授を探してくれと頼まれる。旧友オクスリーの身を案じてナスカへ向かったインディだったが、そこで待ち受けていたのは、またもイリーナたちだった。
(2008年 アメリカ)

【インディはインディなり】
 予告編だけでこんなにワクワクしたのって、いつ以来だろう。もうあの音楽が流れるだけで、血が沸き立つ。インディ・ジョーンズ、20年ぶりのおかえりなさい、である。

 その期待を裏切らない出来栄え。
 いや、真新しさなんてないのだ。敵(反米国家)の一味がいて、謎解きとお宝の争奪戦を繰り広げて、最後には「泥棒のポケットには大きすぎる」ほどの財宝が姿を現し、で、ハッピーエンド。そのフォーマットは第1作以来変わっておらず、旧態依然とさえいえる。
 今回新たに盛り込まれた要素だって、たとえば古代人にとって最大の宝がアレだとか、「この人物は実は……」とか、もはや使い古されたファクターがほとんど。『エヴァ』とか『ターン∀』とか『アポカリプト』みたいなところも出てきたりして、既視感たっぷりだ。

 にも関わらずこれだけのクォリティを実現し、ワクワクを提供してくれるのがインディ・ジョーンズの凄いところ。
 で、なんでそんなに「観たことあるっぽいのに楽しい」かというと、手間ひまのかけかたが尋常ではないからだろう。

 たとえばオープニング。なんてことはない「軍用車両の列に若者たちのクルマが絡む」というシーンからもう、これでもかというくらい多彩なカメラワークを見せる(撮影は『宇宙戦争』などのヤヌス・カミンスキー)。
 しかも、1カットずつがバシっと決まっている。火薬を撒きながら歩くインディの後ろをワラワラとついてくるソ連兵とか、びゅう~んとターザンする姿をびゅう~んと追いかけていくところとか、「この場面はこう見せたらスマートだし、スピード感とか広がり感も出るよね」という撮りかたを、ちゃんと実践してしまっているのが素晴らしい。

 以後も、とにかく動き回るカメラ&細かくかつ適確に割られるカットが踏襲されて、観る者を“その場”へと叩き込んでいく。砂がカメラにザザっとかかるところなんか、思わず目を閉じちゃったもん。それくらいの臨場感とスリル。
 それを、小物から神殿まで立派に作り上げた美術(プロダクション・デザインは『ブラザーズ・グリム』などのガイ・ヘンドリックス・ディアス)が支え、そこにジョン・ウィリアムズのコミカルな音楽が乗っかる。
 やっぱ楽しい。隅々まで手間をかけることで、安っぽさが排除され、作品としての密度が高まり、楽しさも増すということを実感できる仕上がり。

 展開も、王道。悪いヤツは悪いし、そのせいで地獄を見るし、頑張らなくていい人は頑張っちゃうし、インディはなかなか死なないし。ピンチを連続させて飽きさせず、そのピンチの乗り切りかたにはユーモアを用意(これも第1作から踏襲されている手法)してあって、やっぱり楽しい。
 やや中だるみしたのは確か(ていうか、前半30分が面白すぎる)だが、コッテリの2時間。たぶん「TVゲームやアトラクションのよう」とかいう人もいるんだろうけれど、こっちが本家本元、各種のアドベンチャーゲームやアトラクションがインディを真似しているのだということを忘れてもらっちゃあ困る。

 出演陣では、もう絵に描いたロシア訛りの悪役をピシっと演じ切ったケイト・ブランシェットが秀逸。ジョン・ハートも楽しい。
 もちろん、年を感じさせないハリソン・フォード、フレッシュなシア・ラブーフ、相変わらず可愛いカレン・アレンもいいのだが、スタントマンの頑張りにも拍手を送りたい。ああ映画って、生身のアクションを大切にするだけでこんなに楽しくなるんだ、ということがよくわかるくらい、飛ばされたり殴られたり苦しめられたりしている。
 CGを使ってはいるものの決して「SFXアクション」へと向かわず、徹底した「アクション・アドベンチャー」として成立している陰には、こうしたキャラクター造形&役者&スタントマンの力が大きい。うん、それでこそインディ・ジョーンズだ。

 つまり、インディ・ジョーンズがインディ・ジョーンズであることを確認するための映画。スピルバーグとルーカスとハリソンだけでなく、シナリオを依頼されて狂喜したというデヴィッド・コープとか、ハリソン・フォードがあの帽子を被った途端に「落ち着け」と自分に言い聞かせたレイ・ウィンストンとか、そういう「インディへの愛」を持つ人たちの手によって作り上げられた“変化のなさ”に酔う作品である。

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