アイ・アム・レジェンド
監督:フランシス・ローレンス
出演:ウィル・スミス/アリシー・ブラガ/チャーリー・ターハン/サリー・リチャードソン/ウィロウ・スミス/エイプリル・グレイス/ダッシュ・ミホク/ジョアンナ・ヌマタ/アビー&コナ/エマ・トンプソン
30点満点中18点=監4/話3/出4/芸4/技3
【生き延びた男、廃墟での憔悴】
人類をガンの脅威から救うはずだったクリピン・ワクチンは、ウィルスへと変貌して人々を死滅させた。わずかに生き長らえた者は凶暴化し、紫外線を避け、夜の街を彷徨い肉を食らう。免疫を持っていたため正常なまま生き延びたロバート・ネビル中佐は、廃墟と化したマンハッタンで、愛犬サムとともに狩猟と治療薬開発に明け暮れる。と同時にメッセージを電波に乗せて送り続けるネビルだったが、どこからも、誰からも返信はなかった。
(2007年 アメリカ)
★ややネタバレを含みます★
【特異な仕上がり】
確か原作は読んでいるはずだが、忘却の彼方。どうやらかなり改変されているらしい。
でも、真っ当な映画化であり、評判ほど悪くないように感じた。
食事を準備する際にわざわざエプロンをかけることで“人間らしさ”を失うまいとするネビルは、マネキンを相手に寂しさを紛らわせ、アラームが鳴るより先に目覚め、時計をこまめに合わせて日々の緊張感をキープする。かと思えば、もう事が起こった時点でかなり諦めてしまっていることを示す、あの涙。そして、求めていたはずのものがようやく手に入ったはずなのに、うろたえてしまう様子。
そういう「生きている姿」を疎かにしなかったことが「生きている辛さ」を際立たる、そんな描きかただ。『キャスト・アウェイ』を思い出してしまった。
また、流れにアクセントを生む細切れの回想シーン、観客を当事者にする手持ちカメラ&ドキュメンタリー・タッチの撮影、CDの再生以外ほとんどBGMを使わないことでもたらされる孤独感など、意志を持った作りだと感じさせる。
廃墟のNYを完全に再現した美術・CGも見事。前半、もう20分くらいボリュームアップさせて、そこでのリアリティたっぷりの暮らしぶりをもっと観たかったとも思うほど。
ヤツらの造形は「まぁこんなもの」レベルだが、ネビルとの駆け引きを説明抜きに描いて、このあたりの処理も悪くない。抜け落ちる体毛とか粘膜の糜爛とか、細かな描写もしっかりしている。
つまり、ディテールの詰め込みかたがいい。構成、設定、心情などの読み取りを要する作りになっていて、頭の悪い映画に堕していないのだ。
もう1つ感心したのが犬のサム。かなりの名演技。彼の扱いは、あの映画へのオマージュに他ならないだろう。
前述の通り、孤独でサバイバルな前半部をもっともっとコッテリと描いて欲しかった、そこからの流れ(たとえば何度も自殺しようとする場面を作っておくとか)でラストに説得力を持たせてもらいたかったなど、注文をつけたくなる部分もあるにはある。
が、「内容の割には静かで、静かな割にはエンターテインメントで、エンターテインメントの割には無情感があって頭も悪くない」という、特異な仕上がりを見せる作品だ。
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